日本IBMは11月8日、サーバやストレージなどハードウェア製品を中心としたシステム製品事業に関するプレスセミナーを開催した。同社常務執行役員 システム製品事業担当の橋本孝之氏が、同事業の現状や今後の戦略について説明した。
橋本氏はまず、システム製品事業の現状として、5月に発表したzSeries 890の発表を機に「レガシー製品の売上が下げ止まった」としている。zSeries 890は、他社メインフレームからのリプレース事業を拡大するために投入されたメインフレームサーバ製品だ。また、同じく5月に発表したPOWER5搭載のiSeries最新版i5も、「約30%は新規顧客からのもの」と、順調なビジネスをアピールする。橋本氏によると、その新規顧客のうち約10%は国産メインフレームからのダウンサイジングとして選択されているとし、「メインフレームからの受け皿としてiSeriesが強固な地位を確立しつつある」と述べる。さらに同氏は、メインフレームのダウンサイジングとしてzSeries、iSeriesを中心に推進してきたが、「UnixサーバのpSeriesもダウンサイジングビジネスが順調に伸びている」という。
日本IBM 常務執行役員 システム製品事業担当 橋本孝之氏 |
ストレージ製品においては、今後ブランド名をDSに統一するという。同社は10月、エンタープライズクラスのディスクストレージDS8000と、エンタープライズクラスのストレージ技術をミッドレンジクラスに実装したというDS6000を発表したばかりだが、ストレージビジネス全体をみると「大型ストレージ以外の製品が急速に伸びており、今後も同ビジネスの成長が期待できる」(橋本氏)としている。
今後同社がフォーカスする分野として橋本氏は、Powerアーキテクチャを今後も推進することと、Virtualization Engine(VE:仮想化エンジン)を本格展開することを挙げた。
Powerアーキテクチャを基にした最新プロセッサPOWER5は、SMT機能が実装されており、先月発表されたPOWER5搭載のUnixサーバp5 595は、従来機pSeries 690に比べて約3倍の処理性能があるという。POWER5は同社ストレージ製品にも採用されたほか、任天堂のニンテンドー ゲームキューブ、マイクロソフトのXbox、アップルのコンピュータ製品にも提供されており、「チップのOEMを含めた事業拡大を図る」(橋本氏)としている。
VEについては、「ユーティリティコンピューティングを実現するために必要だ」と橋本氏。同氏は、サーバやストレージの価格は下がっているものの、1997年と現在を比べた際のシステムの利用率がUnixサーバで45〜75%から15〜20%まで下がり、IAサーバで35〜65%から7〜15%にまで下がったというForrester ResearchとIDCの共同調査の結果を紹介し、「結局コストは増大し、投資回収率が低下していることになる」と述べる。「使われていないサーバリソースを統合してひとつのサーバのように使えばよい。これを実現するのがVEだ」と橋本氏は説明し、同社が9月に発表した仮想化技術搭載のソフトウェア製品群、IBM Virtualization Engine Suite for Serversをアピールした。橋本氏によると、現在の仮想化製品は各種サーバの監視が主な目的となっているが、今後の製品ではワークロード管理もできるようになるという。
PowerアーキテクチャおよびVEといった集中分野のほかに橋本氏は、zSeriesの技術革新を今後も続けること、さらには、ベテランSEが続々と引退し、レガシーシステムについて理解できる技術者が激減するとされる2007年問題への対処法として、メインフレーム技術者を育てるとしている。具体的に同社は、大学に講師を派遣し、メインフレーム専門の講義を行うことで「zSeriesのノウハウを持った技術者を2万人育てたい」(橋本氏)としている。
最後に橋本氏は、日本IBM社内にてサーバの統合を推進するための統合システム移行センターを開設すると述べた。同社では9月に、サーバやストレージの分析ツールZodiacを利用したサーバ統合支援活動を年内無料で行うと発表しており、これを基に「現在のサーバ、ストレージを分析し、どの部分をどう統合するのが最適かを判断する。そのうえで統合ソリューションの提言を行う」という。橋本氏は、「これまで移行の効果がわからないためにマイグレーションに踏み切れなかったという顧客にぜひ活用してほしい」と述べた。
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