Netscape Communicationsの創業者であり、現在はOpswareの会長を務めるマーク・アンドリーセン氏が来日した。4月8日に都内で行われた講演では、インターネットの普及に伴って情報システムが複雑化していると指摘し、システム管理の自動化を訴えた。さらに会場ではNTTコミュニケーションズが6月から提供するホスティングサービスにOpswareの技術が採用されたことを紹介した。
アンドリーセン氏は1971年生まれ。大学在籍中の1993年に初の商用ウェブブラウザ「Mosaic」の制作に参加した後、ジム・クラーク氏とともにNetscape Communicationsを創業した。1999年にはOpswareの前進となるLoudcloudを設立している。
Opsware会長のマーク・アンドリーセン氏 |
Opswareはアプリケーション管理を自動化するソフトウェアを販売している企業だ。当初はインターネットホスティング事業を中核としていたが、2002年に同事業をEDSに6350万ドルで売却し、社名をOpswareに変更した。2003年9月には日本国内での販売についてNECと提携している。
アンドリーセン氏はまず、インターネットの急速な普及とプラットフォームの変化が情報システムを複雑化していると指摘した。インターネットの利用者数と利用時間が右肩上がりで伸びている一方で、プラットフォームはメインフレームからPCサーバへの移行が進んでいる。この2つが原因でサーバやアプリケーションの数が増え、手に負えないものになっているというのだ。
Gartnerの調査によれば、企業のIT予算のうち75%はシステムの保守・運用に当てられているという。また、数千のサーバに1つ1つ手作業でセキュリティパッチを当てるには膨大な時間がかかるため、パッチを当てる前に脆弱性を攻撃される危険性が高まっている。
こうした問題が生まれるなか、企業は新たなホスティングサービスを求めているとアンドリーセン氏は言う。それは状況に合わせて柔軟に容量が変更でき、常に最新のパッチが当てられているシステムだ。アンドリーセン氏は、同社の提供する自動管理技術を使うことでこういったサービスが実現できると話す。
例えばCode Redのパッチを40台のサーバに当てたFantangoの例では、通常1週間かかる作業がわずか3時間で実現できたという。また、USA Todayでは9.11の事件が発生したときにディスク容量を2倍にする作業を行ったが、通常5〜10日かかるものが90分で済んだとした。
NTTコムの新サービスは「SLA100%保証」
会場では、Opswareを採用したNTTコミュニケーションズのホスティング「AGILIT(アジリット)」も紹介された。SLA(Service Level Agreement)を100%保証し、障害が発生した場合には料金返還に応じる点が特徴という。NTTコミュニケーションズによると、今までホスティングサービスにおけるSLA基準では、障害が一定期間続かないと料金返還に応じなかったという。AGILITでは障害が発生した時点から返金に応じる。
さらに、障害復旧時間があらかじめ定めた目安時間を超えた場合には、超過時間に応じて料金返還率が上がる仕組みを導入する。NTTコミュニケーションズITマネジメントサービス事業部サービス開発部長の与沢和紀氏は「障害が起きないという確実な保証はない。そのため、いかに短期間に復旧するかが重要になる」と話す。アンドリーセン氏によると、Loudcloudで同制度を導入した時の返金総額は売上の1%未満だったという。
Opswareでは今後NTTコミュニケーションズやNECのサポートを行いながら、少しずつ日本でのビジネスを拡大していく方針という。アンドリーセン氏は「我々は5年以上この製品を開発しており、他社に比べて2〜3年先を行っている。顧客はホスティング分野でリスクは取りたくないと考えており、顧客の成功が口コミで広まってシェア拡大につながるだろう」と話し、今後のビジネスに自信を見せた。
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