ユーティリティコンピューティングは、最も人気のあるIT用語のひとつとなった。しかし、適切な業界共通の定義はまだない。
ユーティリティコンピューティングをひとつのテクノロジーとして見る人もいれば、様々な請求書を伴うアウトソーシングのひとつだと説明する人もいる。また、これをITの水道や電力になぞらえる人たちもいれば、単なるひとつの流行り言葉、それもテクノバブルに浸かりきった自己中心的な業界人が使う専門用語に過ぎないと、皮肉な見方をする人たちもいる。
多くのITマネージャーたちが、ユーティリティコンピューティングとは何か、そしてそれはどのようにして自分たちの生活を改善してくれるのか、教えてほしいと考えている。そこで、一歩下がって、ユーティリティコンピューティングが解決しようとしている課題について検証してみよう。
まず大きな課題は、ITへの先行投資と、その投資への経済的リターンを集める長期的プロセスとの間に大きな隔たりがあることだ。ひとたび組織がコンピュータを購入しても、その投資額に見合う価値をその先ずっと享受できるという保証はない。また、高価なIT資源を生かせるどうかはコンピュータの所有者次第であるのも事実だが、特定のITコストが特定の利益や生産性の向上に貢献したと関係付けるのは困難だ。
このようなITのコストと事業における利益との隔絶が、ITの効率性と管理に関するあらゆる問題を引き起こしている。
結果として、システムが十分に活用されていない、またはシステム設定に柔軟性がなく、事業環境の変化に応じた変更が困難であるといった状況が生まれる。また、コンピュータ化を進めた結果、どの事業が最大の経済価値を生んでいるのか把握するのはほとんど不可能だ。
そして何よりも重要な問題は、第一線の経営者の間に密かな疑念が存在していることだ。それは、ITの効果を本当に測定することが不可能なため、ビジネスにおけるITの効果は戦略的には重要ではないかもしれないというものだ。
ユーティリティコンピューティングは、これらの諸問題に対し、以下のような手法で対応する。
ユーティリティコンピューティングのウソ・ホント
ユーティリティコンピューティングは、常に外部委託を必要とするのではないかと一部で信じられている。しかし、外部委託はユーティリティコンピューティング導入の手段のうちのひとつに過ぎない。ほかの手段として、自社で運営する社内ユーティリティや、「マルチソース」ユーティリティの管理サービスの利用、また専門のサービス課金制プロバイダ(インターネット接続プロバイダ、アプリケーションサービスプロバイダ、ホスティング企業)などを利用するといった手段がある。これらの手法には、特定の顧客ニーズによって様々な利点がある。
どのユーティリティモデルを選択した場合も、顧客はユーティリティコンピューティングが自社のニーズに合った正しいソリューションであることを理解し、しっかりした目的や利点もわからないままコストや複雑さだけが増すといった状況にならないよう確認すべきだ。ここでは、顧客をある企業のテクノロジーベースで囲い込み、選択の自由を奪ってしまうような契約に注意する必要がある。
ユーティリティコンピューティングは、コンピューティング能力をコモディティ化するものではない。デジタルの世界の1と0はこれまで以上に価値のあるものとなり、その価値は実行するタスクによって様々だ。コンピューティング能力をコモディティとして扱ったり、ITのコストと利点を顧客から見えないようにしたり、顧客の決断能力を損なわせたりするような柔軟性のない契約は、IT投資から最大の価値を引き出したいと考えているITマネージャーにとっては大きな何の意味もなさないものだ。
IT投資を現実の事業活動に直接結び付けることができれば、ユーティリティコンピューティングはITビジネスにおける戦略的価値を最大化する新たな力となる。そうなれば、企業やIT業界全体にとってユーティリティコンピューティングは大きな利点をもたらすことになるだろう。
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