Harvard Business Reviewの2003年5月号に、「IT doesn’t matter(ITなど重要ではない)」という記事が掲載された。ITは本当に重要ではないのだろうか。ガートナージャパン主催のSymposium/ITxpo 2003にて、同社のリサーチバイスプレジデント栗原潔氏は「IT does matter (ITは重要だ)」と反論した。
「IT doesn’t matter」でITの非重要性について語られている内容はこうである。ITは電気のような存在になりつつある。電気というものは不可欠ではあるが、どこの電気を使っても同じであり、差別化の要素にはならない。つまりITを利用しているからといって、企業の差別化要素にはつながらないというのだ。さらに同記事では、ITへの支出額と企業の業績に相関性はないと語っている。
これについて栗原氏は、「なかなかうまく語られており、ITに携わる者にとっての大きな警鐘として受け止められるが、ITが重要でないかというとそうではない」という。「確かにITは電気に近いものがある。しかしそれはIT基盤のほんの一部でしかない」。同氏は、ITの本質が「電気」に例えられる部分にあるのではなく、「使い方」にあるのだと主張する。そして、「テクノロジーそのものが差別化の要素とならないことは事実だ。しかしそのテクノロジーの使い方は大きな差別化要素につながる」と語る。
ガートナージャパン リサーチバイスプレジデント 栗原潔氏 | |
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では、ITは一体どうあるべきなのか。栗原氏は、「実は5年前に語ったことと変わっていないが、現在はさらに当てはまることなので繰り返し言わせてもらう」と前置きしたうえで、無駄なITの例をあげた。同氏のいう無駄なITとは、マニアックなIT、硬直化してしまったIT、コスト意識に欠けたIT、横並びのIT、顧客を無視したIT、タイミングを逃したITなどだ。栗原氏は、「ITは事務処理の効率化など、はっきりした目的があって導入されるべきなのに、ITを導入すること自体が目的となってしまっている場合がある」と指摘する。たとえば政府はITを教育現場にも活用しようということで、学校へのIT技術の導入を進めているが、これにより学校でITがどのように活用されるべきなのか、IT導入を推進している政府が理解しているかどうかも疑問だという。「教師の事務処理が効率化でき、その結果生徒と接する時間が増える、といったことはすぐにわかりそうなことだが、それさえ答えられない大臣の姿を先日テレビで見てしまった。手段が目的化してしまったITなど、意味がないものだ」(栗原氏)
そこで栗原氏は、ビジネスプロセスフュージョンというコンセプトについて語った。これは、従来独立していたビジネスプロセスを統合し、総合管理することでビジネスの変革が可能になるという考えだ。ビジネスプロセスを統合管理すれば、IT導入の目的もはっきりしてくる。これは企業がリアルタイムエンタープライズとなるために不可欠なことだというのだ。「リアルタイムのアプリケーションは数多いが、リアルタイムエンタープライズはそう多くは存在しない。外界の出来事や環境の変化に俊敏に対応し、他社に先駆けて市場機会を獲得できる企業がリアルタイムエンタープライズだ。これはいくら多くのリアルタイムアプリケーションを導入したところで実現しない。要はビジネスプロセスをいかに統合するかにかかってくる」(栗原氏)
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