BIを語るガートナー、「IT投資は左脳型から右脳型へ」

藤本京子(CNET Japan編集部)2003年06月05日 20時59分

 6月5日都内にて開催されたSAS Intelligent Enterprise 2003にて、ガートナージャパンのジャパンリサーチセンターリサーチディレクター、栗原潔氏が「企業価値向上を目指すビジネスインテリジェンス(BI)戦略」というテーマにて基調講演を行った。同講演の中で栗原氏は、IT投資全体の最新動向や投資戦略について、またそれがBIに与える影響などについて語った。

 栗原氏はまず、IT投資増加率が昨年・今年と停滞している現状を示し、「予算が限られているからといって、全体の予算をカットするのはよくない。投資のフォーカスを絞り、メリハリのある投資を行うことが重要だ」と述べた。

 投資のフォーカスを絞るとすれば、どの部分に注力すればよいのか。栗原氏は、ITの役割の変化についても語る。「これまでのITの役割は、Efficiency(効率性)をあげることが中心だったが、今後はEffectiveness(ビジネス上の効果)を考えたITに注力していくことが大切だ」と栗原氏。同氏によると、これまでのITの役割は数字の計算や事務処理が中心の「左脳型」だったが、今後はクリエイティブな部分を扱う「右脳型」の役割が重要になってくるのだという。「左脳型ITへの投資は、導入直後にコスト削減効果を享受できるが、誰もが行っていることなので競争優位性の強化にはつながらない。他と同じスタートラインに立つための投資だと考えたほうがよい」(栗原氏)

ガートナージャパン
ジャパンリサーチセンターリサーチディレクター、栗原潔氏

 では、右脳型ITへの投資はどうだろうか。栗原氏は、単発的に右脳型ITへの投資を行う場合、短期的には競争優位性を確保できるが、競合他社にすぐ追随されてしまうため、その効果は最大で2年程度だと指摘する。「右脳型ITへの投資を継続的に行ってこそ、長期的な効果が望める。他社はテクノロジーの真似はできても、プロセスとノウハウは真似できない」(栗原氏)

 IT投資を行うにあたって、栗原氏はポートフォリオを作成することが重要だと述べる。基盤系、トランザクション系、情報系、戦略系に対しそれぞれ何%の投資を行うかということだが、平均的な企業は基盤系に58%、トランザクション系に12%、情報系に16%、戦略系に14%という数字が一般的なのだという。このバランスによって、「コスト重視型」、「コスト/スピードバランス型」、「スピード重視型」の投資に分かれるわけだが、「一般的に日本企業はコスト重視型の投資が多い」と栗原氏は指摘する。コスト重視型は情報系・戦略系への投資が少ないのが特徴だが、その部分への投資を増やし、「コスト/スピードバランス型を目指すべきだろう」と栗原氏はいう。

成長を続けるBIへの投資

 ここで登場するのがBIだ。BIは、知識の構築プロセスだと言っていい。数あるデータ資産をためこむだけでなく、そのデータとユーザーの対話プロセスを構築し、有効活用するというものだ。BIは段階的な拡張が容易で、既存インフラを再構築する必要もないため、それほどコストはかからない。また、定量的分析を行うことではじめて明らかになる無駄を省くこともでき、問題解決型の展開で短期的に投資回収が可能なのもBIの特徴だ。

 栗原氏によると、BI市場は全世界で毎年約10%の成長を続けているとのことで、特にヨーロッパでの伸びが堅調なのだという。「ソフトウェア市場で2桁の伸びを示しているのは他にはない」と栗原氏。日本独自の調査データはないとしながらも同氏は、「顧客の話を聞いている限り、確実にBIへの支出傾向は高まっている」という。

 また栗原氏は、BIの戦略的展開ともいえるCPM(Corporate Performance Management)も増加傾向にあると語る。CPMとは、全体的なビジネスパフォーマンスを監視・管理するための方法論や評価基準、プロセス、システムなどだが、「2004年までに企業の40%がCPMを実装することになるだろう」と述べた。

BIプロバイダの選択基準とは?

 BIソリューションプロバイダは数多いが、導入を決めた場合、その中からいかにしてプロバイダを選べばいいのか。栗原氏は、特定のベンダー名はここでは控えると断ったうえで、選択のヒントをいくつか与えてくれた。

 まずは実績だ。新しい製品はなかなか安定しないこともあり、長期的に安定したテクノロジーを提供していることが条件だという。次に、分析ツールのみならず、バックエンドのサポートツールや全体的な方法論を提供しているかどうかも判断基準となる。また、オペレーション部分のBIだけでなく、戦略的なBIにフォーカスしているかどうか。そして業種別のノウハウや、国内でのサポート体制も重要だ。

 「BIソリューションプロバイダの選択は、企業の競争優位獲得に大きな影響を与える。よく考えて適切な選択を行ってほしい」(栗原氏)

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