エルピーダ坂本社長、「日本のDRAM業界は今がチャンス」

藤本京子(CNET Japan編集部)2003年10月09日 21時31分

 「DRAM業界における日本メーカーのチャンスは今、大きくなりつつある。携帯電話やデジタル家電事業がどんどん進化していることに加え、キャッシュも集めやすい状況だ」。エルピーダメモリ代表取締役社長兼CEOの坂本幸雄氏は8日、幕張メッセにて開催中のCEATECで基調講演を行い、このように語った。エルピーダは同日、1Gビット DDR2 SDRAMの開発に成功したとの発表があったばかり。ますます勢いづく坂本氏が、エルピーダに掛ける思いを語った。

 坂本氏がいう「キャッシュを集めやすい状況」というのは、日本の各メーカーで半導体部門のスピンオフが進み、それぞれが今後株式公開に踏み切るだろうとの見方からだ。「株を出しきってしまった米国とは違い、日本にはまだ上場していない半導体メーカーが多い。エルピーダを含めこれら企業は今後上場し、株式市場でキャッシュを集めることができる」(坂本氏)。エルピーダでは、512M DRAMでのシェア拡張に加え、モバイルRAM市場でも月100万個以上のオーダーが入るなど順調に業績を伸ばしており、「来年度中には株式公開を目指す」としている。

 坂本氏は、エルピーダがフォトマスク分野で凸版印刷と提携したり、モジュールではキングストンテクノロジーと提携するなどアライアンスに力を入れていることについて、「不特定多数のベンダーと取引するのは時代に合っていないと」と述べ、信頼のおける特定ベンダーと提携し、安定した供給を受ける方法を選んでいると語る。今後もパッケージ、ウエハ、テストなどの面で他社との提携を進める計画で、近日中には新たなパートナーシップの発表もあるという。

エルピーダメモリ代表取締役社長兼CEO、坂本幸雄氏
また坂本氏は、パートナーとの提携により、投資効率の向上にもつながるとしており、「エルピーダでは、R&Dとファブにしか投資はしない。エルピーダの投資規模は1000億円以上だが、他社とは違い、組み立てやテストの部分に投資は行わないので、他社よりも投資効率がいい」と述べている。なお、現在同社の自社生産とファウンドリでの生産比率は、50対50である。

 坂本氏がエルピーダの社長に就任したのは、同社の業績が非常に落ち込んでいた2002年11月。その際、エンジニアのレベルも世界トップクラスで、オペレーションもインフラも十分に整っている同社がなぜうまくいっていないのか考えてみたところ、やはりマネジメントがうまくいっていないからだとの結論に達したという。「日本のマネージャーはほとんどがサラリーマンで、体を張ってまで仕事をやろうという意気込みのある人が少ないこともあるが、やはり組織を変えなくてはならない」と感じた坂本氏は、無駄な役職の削減や、会議時間およびレポートの短縮など、親会社であった日立とNECで浸透していた大企業体質を変えていったという。

 「顧客第一とみな言うが、それは顧客が自分たちの給料を支払ってくれているから。それを忘れてはいけない」という坂本氏は、「顧客に感動を与えるためには、顧客のニーズに応えるだけでは不十分。顧客が考える以上のものを提供しなくては」と主張する。そのためエルピーダでは、「年齢、学歴に関係なく、能力に合った報酬と、自由でのびのびと仕事ができる環境を提供する。そうすれば、おのずといい結果がついてくる」と坂本氏はいう。

 今後エルピーダでは、現在同社がおもなターゲットとしているパソコン、サーバ市場に加え、デジタルコンシューマーおよびモバイル市場にも注力していくという。「現在開発している製品の半分において世界シェアトップをねらい、DRAMのトップカンパニーを目指す」と、坂本氏はいつものように強気で語った。

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