最終更新時刻:2008年7月9日(水) 15時48分

M&Aが相次ぐストレージ業界の裏事情をアナリストに聞く

藤本京子(CNET Japan編集部)

2003/07/14 20:28  

 データ量の増加に伴い、ストレージの需要は高まるばかりだ。そのストレージ市場もDAS(Direct Attached Storage)からNAS(Network Attached Storage)、SAN(Storage Area Network)へと市場の中心は移りつつあり、変動がめざましい。またストレージの相互接続性(インターオペラビリティ)が進み、ベンダー間の差別化が難しくなるなか、ハードウェア企業はソフトやサービス部分で付加価値をアピールしようと躍起になっている。こうした動きに伴い、各企業の提携や買収話も数多い。激動するストレージ市場でいま何が起こっているのか。現在のトレンドと企業提携に潜む問題点などを、米Gartnerでストレージ・マネジメント・ソフトウェアのチーフアナリストを務めるCarolyn DiCenzo氏に聞いた。

---ストレージ業界の新しいトレンドを教えてください。

 これまでストレージは高価なものばかりでしたが、それほどパフォーマンスが高くなくても安価で手に入るものが市場に出回るようになり、使い分けが必要になってきました。そこに多くのソフトウェアベンダーが目をつけ、新たな製品を投入しています。

 たとえば重要なデータとそうでないものをふりわける機能を持ったものなどです。メールやデータベースのデータなどは重要なデータですが、古いものはそれほど重要でないかもしれません。その場合、60日以上経ったものは安価なストレージに移し、万が一のことが起きてデータのリカバリが必要となったとき、新しいものからリカバリする、といった機能を備えたものがあります。

米Gartnerストレージ・マネジメント・ソフトウェア チーフアナリスト
Carolyn DiCenzo氏

 同じ流れで注目をあびているのがディザスタリカバリ(災害復旧)市場です。これまでベンダーはバックアップ機能ばかりにフォーカスしていましたが、顧客はバックアップよりリカバリが重要だと思っています。バックアップをうまくやっていても、何かが起こったときにそれを早急にリカバリできなくては意味がありませんから。バックアップの時間短縮機能はかなり進んでいますが、時間短縮すべきなのはリカバリのほうです。いまリカバリに注力した製品を提供しているのが、Revivio、StorageTek、Persist、PowerQuest、Data Domain、Avamarといった企業です。これらの企業は、ソフトウェアやソフトウェアとディスクアレーのソリューションで新しいリカバリ機能を提供しようとしています。

---ハードウェアベンダーもソフトウェアに力を入れていますね。EMCがLegatoを買収したのも、そういったソフトウェア部分を強化するためでしょうか。

 そのとおりです。Legato買収の大きな理由は、メールのアーカイブ機能などを持ったライフサイクルデータ管理ソフトが目的でしょう。この製品のLegatoへの売上貢献度はそれほど高くはないのですが、EMCのハードウェア製品を売るにあたってとてもいいソフトウェアだといえます。

 Legato買収における2つめの理由としては、EMCにとってソフトウェアを売るための新たな販売網ができるからです。Legatoの販売チャネルで直販の占める割合はほんの24%ですが、これはEMCにとって自社のソフトを売るチャンスにもつながるため、大変重要なものです。また、代理店販売網というのはEMCが得意でなかった部分ですから、これも大いに利用できるでしょう。Legatoのソフトウェアを購入していた顧客がEMCのハードを選ぶチャンスも高まります。

 そして一番重要なのがLegatoのバックアップ製品でしょう。EMCは自社でEMC Data Manager(EDM)という製品を抱えていますが、これはあまりうまくいっていません。しかしLegatoを買収することでバックアップ製品が強化されます。これまでストレージソフトウェアでトップを走っていたのはVeritas、Legato、そしてIBMのTivoliでした。EMCはバックアップ製品以外ではトップ3に入っていたので、バックアップ製品を強化すればEMCの地位はさらに高まることになります。

 今EMCのソフトウェアの売上は全体の23%ですが、Legatoなどの買収で24%に、将来的には30%まで引き上げたいとしています。EMCのCEO、Joe Tucciは、近い将来あとひとつソフトウェアを買収すると述べていました。

---ストレージのインターオペラビリティが進みつつあり、ハードウェアベンダーは他社製品との差別化が難しくなります。それをソフトウェアでカバーしようという動きから、業界内で買収などがさかんになっているのでしょうか。

 そうですね。インターオペラビリティが実現してもストレージがコモディティ化するわけではないですが、やはりハードを多く売るためにはソフトウェアとサービス部分が重要です。IBMがGlobal Servicesと名づけたサービスを展開しているのがいい例ですし、EMCのソフトウェア強化もそうです。顧客もひとつのベンダーとの取引ですべて面倒を見てもらえるほうが楽ですし、ストレージ関連製品をすべてひとつのベンダーで購入すると、インテグレーションまでやってもらえるケースが多いですからね。サポートに関してもソフトとハードのサポートが別だと面倒です。

 顧客にとってメリットがあるだけでなく、買収された比較的小さな企業は販売チャネルが広がることになり、買収する側の企業は自社の技術を強化できる。このような買収は関係者が皆満足できるいいケースですね。OracleがPeopleSoftを買収しようとしているケースは製品も顧客層も重なるもので、単にライバルを倒そうというものです。これは顧客にとっても従業員にとっても混乱を招くだけで最悪のケースです。

---なるほど。しかしストレージ業界の買収劇でもすべてが丸く収まるわけではないのでは?

 確かにそうです。Veritasは最近Precise Software Solutionsというソフトウェア企業を買収したのですが、実はPreciseはVeritasのライバルであるEMCとつきあいのある企業でした。Preciseが買収されたことでEMCとPreciseの関係は事実上終わったことになります。これを受け、7月上旬にEMCはBMC Software社のストレージ管理アプリケーション、Patrol Storage Managerの所有権を買収し、Preciseの技術に頼っていた部分を補っています。

 また、今回のEMCのLegato買収にも問題があります。Legatoは、売上の大半をEMCのライバルでもあるSunに頼っていました。SunのSun StorEdge Enterprise Backupという製品は、実はLegatoのOEMなのです。EMCがLegatoを買収したことで、Sunが今後もこの製品を売り続けるかどうかはわかりませんね。

 また、EMCがLegato買収を発表するほんの数週間前、HPがLegatoと提携し、LegatoのE-mail ExtenderとHPのサーバやストレージ製品を中心にメールのアーカイブソリューションを進めると発表したばかりでした。しかしHPはEMCをライバル視していますから、この提携話が今後どうなるのかまだわかりません。

 このように、顧客や買収関係にある当事者同士にとっていい買収でも、ライバル関係にある企業との提携に問題が残るケースはあります。

---ストレージの仮想化が話題ですが、どのような企業がどういった製品を出しているのでしょう。

 仮想化技術だけを購入する顧客というのはいません。仮想化はソリューションの一部でしかありませんから。たとえばFujitsu SofTekという富士通の関連企業で、ストレージソフトウェアを提供する米国企業があるのですが、ここはDataCoreの仮想化技術のコードを買収し、自社製品に組み込んでいます。Fujitsuが提供するのはストレージリソース管理のソリューションですが、その中に仮想化技術を組み込んでいるのです。

 仮想化技術というのは基本的にはボリューム管理技術と同じで、いくつかの種類があります。ストレージRAIDコントローラまたはサーバに仮想化技術がついているもの、そして最近になって出てきたのが、ネットワーク上で仮想化を行う技術です。仮想化というよりは、ネットワークストレージの管理といったほうがいいかもしれません。仮想化はその一部ですからね。

 ネットワーク上で仮想化のできる技術を提供している企業はまだ多くありません。HPはStorageAppsという企業を買収してCASAという製品を出し、そこで仮想化技術を提供しています。FalconStorやStoreAge、DataCoreなどもネットワーク上での仮想化をターゲットとしています。

 EMCはPowerPathという、ネットワークからストレージに動的にパスをわりあてる製品を発表しています。これまで同社はサーバ上で同じ働きをする製品を提供していましたが、同じ機能をネットワークで提供しようというものです。これは今年後半に出荷される予定です。

 CompaqはHPとの合併前にVersaStorという仮想化技術を提供する製品を発表し、2001年にかなり注目を浴びたのですが、結局延期の連続でこの製品が市場に出ることはありませんでした。この技術は大規模な環境で実行するには大変難しく、現在市場に出ているのは比較的小規模なものばかりです。しかしこの分野は非常に注目を浴びており、今後が期待できるでしょう。

---ストレージ市場はまだ技術革新の途中なので、導入するには少し様子を見てからのほうがいいのではないかという意見もありますが。

 それはPCも同じです。来月にはもっといいPCが出るから今は買い時ではないといっていると、いつまでたっても買えません。今どういう機能を必要としているのかを考えた上で必要最低限のストレージを購入し、将来的にアップグレードしていくのがいいと思います。データ容量は増える一方ですから、ストレージはどうしても必要なものです。

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