楽天は12月12日、事業戦略説明会を開催した。2003年第3四半期に行った一連の買収によってさらなる成長が見込めると説明し、今後のビジネス拡大に自信を見せた。
楽天は今年に入って大型の買収を立て続けに行った。1つが宿泊予約サイト、「旅の窓口」を運営するマイトリップ・ネット、そしてもう1つがオンライン証券のDLJディレクトSFG証券(DLJ証券)である。これらの買収資金を調達するため、12月には10万株の公募増資を実施し、464億円を手にしている。
DLJ証券の買収について、楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史は「端的に言えば儲かるから」とその狙いを説明する。DLJディレクトSFG証券はオンライン証券として3本の指に入る企業で、1日当たりの売買代金は638億円という。これはイー・トレード証券の773億円、松井証券の680億円に次いで第3位の規模に当たる。株式市場が好調だった2003年第3四半期における同社の営業収益は26億8200万円、営業利益は9億2700円、営業利益率は約35%となっている。
金融事業には引き続き参入
楽天では今後も金融事業には積極的に参入していくという。「楽天の資産は顧客(データ)ベースにある。これをどうお金に変えていくかが問題だ」(三木谷氏)。
楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史 | |
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具体的にはまず、2004年4月から施行される証券会社の代理店制度を利用して、楽天の会員にDLJ証券を利用してもらうように様々な施策を行っていく予定だ。売買の際の手数料に楽天のポイントが使えるようすることでDLJ証券に口座を開設してもらうといった手法を考えているという。
注目されている決済事業への参入については否定しなかったが、「米国ではオンライン送金の仕組みがないため、米eBayのPayPalなどは送金手数料として3〜4%を取れる。しかし日本では手数料なしにオンライン送金サービスを提供しているところもあり、難しいのではないか」と話し、決済事業が利益を大幅に押し上げることはないとの見方を示した。
「トラベル事業は高収益な第3の柱」
マイトリップ・ネットの買収については、「ネット宿泊事業において圧倒的No.1の地位にあり、利益率も非常に高い」(三木谷氏)とその魅力を語る。また、旅の窓口の会員は男性のビジネスユーザーの比率が高いことから、今まで楽天が取り込めていなかった顧客層にリーチできるとメリットを強調した。
2003年第3四半期におけるマイトリップ・ネットの売上高は11億1300万円、営業利益は3億1000万円で、流通総額は前年同期比32.1%増の177億9100万円という。三木谷氏はこれらの数字について、「まだまだ潜在余力があり、(買収により)成長スピードを高めていける」と自信を見せる。
現在旅の窓口による収入はホテル・旅館からの仲介料だけに頼っており、宿泊代金の6%が同社の収入になるという。楽天では新たな収入源として、広告事業やツアー販売、システム利用料の徴収といったメニューを加える考えだ。「米国ではExpediaやHotels.comなど、ホテル分野は異常な成長を見せている。ビジネスのバリエーションを増やすことで、利益を拡大したい」(三木谷氏)
「EC事業、ポータル事業に続いてトラベル事業という第3の柱ができた。しかも非常に高収益だ」(三木谷氏)
2社の買収により、試算では2003年7月〜9月の営業利益は楽天単体の10億7900万円から、23億1100万円と約2倍になったとしている。
グループ全体のページビューが1日1億ページに到達
三木谷氏は同社のEC事業の状況についても紹介した。2003年第3四半期の流通総額は318億2000万円となり、前年同期比67.4%増と大幅な伸びを見せたという。「好調が持続しているのではなく、加速している」(三木谷氏)。ポイント獲得数に応じて特典をつけるといったマーケティング施策が成長を加速していると三木谷氏は説明した。
グループ全体については、旅の窓口が加わったことで楽天の会員数が2200万人を突破したという(サービス間で重複する会員を含める)。また、グループ全体のページビューが1日1億ページに到達したと紹介した。ただし広告の売上高はインフォシークとライコスの統合によって広告メニューが減ったことから減少し、第3四半期の売上高は前期より2億1600万円減の145億4400万円となった。今後はインフォシークや楽天市場、旅の窓口など楽天グループの会員IDを統一し、ポイントも共通化することでグループ間のシナジー(相乗効果)を高めていくとしている。
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