「Photoshop」体験をモバイルに--アドビが取り組む写真編集アプリ「Project Rigel」とは

Stephen Shankland (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2015年08月31日 07時45分

(編集部注:この記事は、8月27日に公開された「アドビ、モバイル向け無料写真編集アプリを発表へ--「Project Rigel」の内容を明らかに」に未翻訳部分を追加し、一部を編集して公開しています)

 サンフランシスコ発--「Photoshop」は非常に知名度が高く、その製品名は写真編集と同義語になっている。だが、Photoshop自体の成功はパーソナルコンピュータに限られており、スマートフォンやタブレットではそれほどうまくいっていない。

Adobeのサンフランシスコオフィス。
Adobeのサンフランシスコオフィス。
提供:Stephen Shankland/CNET

 Photoshopの開発元であるAdobe Systemsは、10月に開催するAdobe Maxカンファレンスでその状況を変えたい考えだ。開発者とクリエイティブプロフェッショナル向けのカンファレンスMaxでは、新しいPhotoshopアプリが発表される予定で、まずはAppleの「iPhone」と「iPad」向けの写真編集アプリが、続いて「Android」デバイス向けアプリが提供される。この無料ソフトウェアは今のところ「Project Rigel」とだけ呼ばれているが、PC上では圧倒されてしまうほど複雑なプログラムに、もっと簡単にアクセスできるインターフェースとして設計されている。

 「Project Rigelの設計と開発においては、デスクトップのレタッチツールを使い慣れたプロフェッショナルのニーズに応えることを目指したが、それ以上に、コンテンツに応じた塗りつぶしやスポット修復などのPhotoshopツールになじみのないユーザーを意識した」。Adobeのデジタルイメージング担当シニアプロダクトマネージャーのManu Anand氏は、当地のAdobeオフィスでのインタビューでこう語った。「こうしたツールが一般のユーザーにも親しみやすく、もっと簡単に使えるようになる」(Anand氏)

 アプリ自体はタッチスクリーンインターフェースで、編集オプションのメニューが下部に、ポップアウト式のツール調整が左側に配置されている。また、強力なズーム機能も用意されており、太い指先でも画像の特定の範囲を正確に選択できるようになっている。さらに、PC向けPhotoshopにはない顔認識技術も搭載する。これは顔の特徴を識別して、目の大きさや角度を変えたり、口角を上げて笑顔を強調したりすることができる機能だ。

 自社のビジネスを現代のコンピューティングトレンドに適応させようとしているAdobeにとって、Photoshopをモバイルユーザーに提供することは至上命題となっている。同社としては、Appleの「iOS」とGoogleのAndroidの急激な台頭によって大きく水をあけられたMicrosoftの二の舞は、是が非でも避けたいところだ。iOSとAndroidは、ほぼすべてのスマートフォンとタブレットに搭載されており、こうしたモバイルデバイス向けにアプリを提供することで、最新のトレンドに遅れずについていき、さらに大きな市場に手を広げるとともに、現在はクリエイティブプロフェッショナルが主なターゲットのAdobeサブスクリプションを、この新たな層の顧客に売り込むことが可能になってくる。

 Adobeは何年も前からモバイルアプリの開発に取り組んでいるが、以前のモバイルデバイス向け写真編集アプリ(2011年に10ドルで発売された「Photoshop Touch」)は満足のいく完成度ではなかった。Adobeは2015年5月、Photoshop Touchの提供終了を発表し、同時にProject Rigelを先行披露した。関連するモバイルアプリとしては、手軽な写真編集用アプリ「Photoshop Express」や、2枚の写真を合成する「Photoshop Mix」などが現在も提供されている。

 モバイルデバイスで写真を編集したいというユーザー向けにサービスを提供する企業は非常に多い。「Pixelmator」や「VSCO Cam」、Googleの「Snapseed」といった競合製品の存在は、PhotoshopがPCにおいては不可欠なソフトウェアであっても、モバイルデバイスでは事情が異なるということを意味する。また、Adobeは2014年、独自のモバイル編集アプリを手がける企業Aviaryを買収したが、同社のアプリは今も提供されている。

 Anand氏はPhotoshop Touchについて、リリース当時は良くできたアプリだったが、Adobeのネットワーク型デジタルツール群とはあまり相性が良くなかったと述べた。それらのデジタルツール群では、タブレットなどのデバイスで写真を編集した後、同じプロジェクトをPCなど別のデバイスで引き続き作業することができる。これこそが「Adobe Creative Cloud」の中核をなす機能だ。AdobeのサブスクリプションプランCreative Cloudは現在、同社の主なソフトウェア販売手段となっている。2015年5月現在のCreative Cloud登録ユーザー数は460万人だ。

 Photoshopの売り上げは今後もPC版が大きな割合を占めるとみられるが、今ではプロフェッショナルも新しいアイデアを試すときにタブレットを使うようになったと、International Data CorpのアナリストAl Hilwa氏は指摘する。

 Hilwa氏によると、「プロフェッショナル層は今後も高解像度の大型スクリーンを使用できるデスクトップ体験を好むだろう」が、より大きな市場ではモバイルデバイス向けの写真ツールが強く求められているという。「一般ユーザーの間で写真とデジタルアートが急速に普及している現状を考えると、この分野は拡大する可能性があると思う」(Hilwa氏)

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