Adobe Systemsは「Flash Player」の力を弱めたところではあるが、このブラウザプラグインを安楽死させてしまったわけではない。
Adobeは米国時間11月9日、モバイル向けのFlash Playerプラグインの開発を中止したことを認めた。Adobeがこのソフトウェアの開発と宣伝に力を入れていたことや、さまざまなコンピューティング端末で使えるソフトウェアを開発するプログラマーの手助けを約束していることがFlashの主なメリットであることを考えれば、この動きには驚かされた。
しかしその背景を考えれば、この開発中止はそれほど驚くことではなかった。Flashに反対する人々は多く、なかでも最大の敵であるAppleは、モバイルコンピューティング分野でも最も強力なプレーヤーでもある。モバイルでのウェブ利用の62%を占めるブラウザでFlashを禁止することで、Appleは事実上、Adobeの野心に対して第三者としての拒否権を発動した。
このニュースに、「鐘を鳴らせ!悪い魔女は死んだ!」というような喜びの声が巻き起こっている。John Gruber氏は、「ひどいがらくたが厄介払いになった」と結論している。Gruber氏は、Flashは過去の遺物だという、Appleの前最高経営責任者(CEO)のSteve Jobs氏の意見に以前から賛成していた人物だ。
Flashに対する批判は数え切れないほどある。実際の批判は、プロセッサに負荷がかかりすぎることや、バッテリを浪費すること、セキュリティリスクに対するパッチがあまりにも長い間当てられなかった場合もあることなど、Flashの直接的な欠点に集中している。別の陣営は、Adobeが管理する専有技術であるFlashが、少なくとも理論上はより大きなグループの利益となる立場にあるウェブ標準から、忌み嫌われていると考えていた。Adobeが現在、その未来に欠かせないものとして挙げているのが、まさにそうしたウェブ標準だ。
しかし、Flashはもう死んだと判断してよいという考えの人には、こう警告したい。Flashは死んでいないと。
確かに、Adobeはコンピューティング業界の重要な新分野を断念した。Appleの「iPhone」と「iPad」に代表されるスマートフォンやタブレットに、開発者は非常に大きな関心を寄せている。開発は猛烈なスピードで行われ、大量に出荷されている。Flashを使った膨大な数のウェブページをモバイルブラウザで表示させるという希望を捨てるのは、Adobeにとって簡単なことではなかっただろう。
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