Appleはクラウド音楽サービスの開始に必要なライセンスをすべて、米国時間6月6日から開催のWorldwide Developers Conference(WWDC)に間に合うように締結するのではないか。音楽業界ではそうした期待が高まっている。
Appleと音楽出版社の交渉に詳しい2人の情報筋によると、本格的な交渉が始まったのはつい最近のことだが、契約の締結にあたって双方が提示する金額の隔たりは比較的小さいという。とはいえ、交渉の対象になっているのはクラウドライセンシング契約であり、前例がなく複雑なものであるため、Appleのサービス開始が遅れるような状況は、何通りか考えられると内部関係者は語っている。
Appleは米国4大レコード会社のうち、EMI Music、Warner Music、Sony Musicの3社とライセンス契約を締結したとされている。米CNETは先週、Appleが今週中に、4大レコード会社で最大のUniversal Musicとの契約に署名する可能性があると報じた。これが実現すれば、Appleは人気音楽の多くについて、楽曲音源の権利を取得することになる。だが、完全に機能するクラウド音楽サービスを提供するには、Appleは出版権も必要になる。
幸いなことに、先ごろ独自のクラウド音楽サービスを立ち上げたGoogleとAmazonを除いて、ほとんどすべての人がAppleのクラウドサービスがすぐにでも提供されることを望んでいる。レコード会社は、消費者がサードパーティーのサーバに音楽を保存し、ウェブに接続できるあらゆる場所からその音楽にアクセスできるようになれば、落ち込んでいる音楽の売り上げがこのクラウドサービスによって伸びるものと期待している。音楽を購入するユーザーは、ハードドライブの障害や故障を心配したり、デバイス間で楽曲を同期したりする必要がなくなる。
しかし、このサービスが頓挫する可能性もまだ残っている。
まず、WWDCまであと2週間しかなく、あまり時間がない。Appleは、音楽出版社の業界団体である米音楽出版協会(NMPA)のような1つの団体ではなく、大手音楽出版社すべてと個別に交渉しなければならないからだ。Appleがレコード会社と契約を締結しても、必要なライセンスをすべて取得したことにならない理由をここで説明しよう。
レコード会社は音源に対する権利は有しているが、出版権は有していない。長年のヒット曲「Twist and Shout」を例に考えよう。あるデジタル音楽サービスが、The Beatlesがカバーする「Twist and Shout」を販売したければ、EMI MusicとApple Corps(The Beatlesの代理人である企業)に対して、The Beatlesがその曲を演奏している音源の使用料を支払う必要がある。次に、「Twist and Shout」の作曲と作詞をしたPhil Medley氏とBert Russell氏の代理人を務めている、どこかの音楽出版社に対して、メカニカルライセンス料と呼ばれるものを支払わなければならない。「Twist and Shout」のIsely Brothersバージョンも販売したければ、Medley氏とRussell氏に別途料金を支払うことになる。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」