振り返ってみれば2010年のPC市場は、世界的な景気の不透明感とは裏腹に、好調な1年だったといえよう。
全世界のPCの出荷台数は、3億5000万台規模に達したとみられており、実に前年比15%以上という高い成長率となっている。新興国市場における出荷台数の拡大が、この大幅な成長を支えているが、先進国市場においても引き続き好調な推移をみせているのだ。
先進国として世界第2位の市場規模を誇る日本では、2010年には年間出荷台数は1500万台を突破したものとみられている。これも、過去最高の規模だという。
実際、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の調べでも、2009年9月にWindows 7の企業向けライセンスが発売されて以来、最新データとなる2010年11月まで15カ月連続で、出荷台数は前年実績を上回っており、その好調ぶりが裏付けられる。Windows 7効果に加えて、PCの低価格化や家庭向けオールインワン型PCの普及、企業における買い換え需要が促進されたことなどが影響している。
では、2011年のPC市場はどうなるのだろうか。
調査会社などの予測によると、2010年ほどの成長はないが、依然として前年比2けた増の成長を遂げると予想されており、全世界で4億台の市場規模に達すると見込まれている。
なかでも、新興国市場におけるPC需要の拡大が引き続き見込まれており、2011年後半には、単月の出荷量で新興国市場の構成比が、全世界の過半数に達するとの予測も出ているほどだ。日本においては、2けた成長ほどの伸びはないとみられるが、地デジ端末としてPCを利用するなど家庭内需要の促進、あるいはWindows XPを利用している企業ユーザーの買い換えや、IT投資意欲の回復といった動きが顕在化することで、引き続き安定した成長が見込めそうだ。
また、インテルの次世代CPUである「Sandy Bridge」が、年初から注目を集めているほか、2011年には、グーグルのChrome OSを搭載したPCの登場も見込まれており、これらが市場の成長にどれだけ影響を与えるかも注目される。
一方、PC市場に影響を及ぼす懸念材料とみられるのが、スレート型(タブレット)端末の広がりやスマートフォンの普及だろう。
スレート型端末は、先行するiPadが引き続き台風の目になるとみられるほか、2011年はAndroidを搭載した製品のリリースが相次ぐ。さらに、マイクロソフトもこの分野への参入準備に余念がない。こうしたスレート型端末が、カジュアルコンピューティングを実現するツールとして普及することで、従来からのPC市場の伸びに影響を与えるのではないかという懸念もある。
だが、スレート型端末が、一概にPC市場を浸食することになるという見方は早計かもしれない。例えば、iPadの販売によって、Macの売れ行きが減少したかというと、実はその逆だ。
アップルの最新決算データである2010年第4四半期(2010年7〜9月)のiPadの出荷台数は419万台。前期(2010年4〜6月)の327万台から拡大している。ところが、この影響でMacの販売台数が落ち込んだかというと、実は、第4四半期には前年同期比27%増となる389万台を出荷。四半期ベースでは過去最高の販売実績を記録したのだ。
もちろん、一部にはPCからスレート型端末へと置き換えるといった動きも出てくるだろう。だが、企業においては、すべての業務をスレート型端末でカバーすることはできず、家庭内の利用においても、たとえば映像管理などの領域は、やはりPCの方が得意だ。
スマートフォンについても同様のことがいえよう。モバイルの閲覧型端末としてはスマートフォンは優れているが、PCで行ってきたすべてのことをスマートフォンに置き換えることはできない。スレート型端末やスマートフォンの普及は、むしろ、PCの存在感を高めることにつながるはずだ。
一部では「PC限界説」も囁かれているが、スレート型端末やスマートフォンには不可能なPC本来の利用に焦点をあてた製品展開や提案を行うことで、PC市場の成長はまだまだ続くのではないだろうか。
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