ソフトバンクがボーダフォン日本法人を1兆7500億円で買収することが3月17日に決まったが、記者会見では両社の交渉がスムーズに行われた秘密も明かされた。それには、なんとCisco Systemsが関係していた。
ソフトバンクは当初、携帯電話事業にはすべて自社で設備を建設して参入する方針だった。しかし自社だけでは早期に全国のネットワークを敷設するのは難しいと考え、2005年後半にはボーダフォンの通信回線を借り入れて携帯電話事業を行うMVNO(Mobile Virtual Network Operator)の契約を結ぶべく、同社と交渉していたという。
そしてその話し合いの中で、「いっそのこと買収した方が早いかなと思った」(ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏)と考えを変え、2006年初頭から買収交渉に入ったというのだ。
ボーダフォン日本法人の取締役 代表執行役社長のウィリアム・ティー・モロー氏は「ボーダフォンは決して売りに出されていたわけではない。孫氏が私の携帯電話に電話をかけてきたときも、『ボーダフォンを買いたいんだ』と言ってきたわけではなく、『両社が繁栄できる方向性を持てないか』というオファーしてきた」と交渉に入った経緯を語った。
さらに孫氏は、Vodafone Group最高経営責任者(CEO)のアルン・サリン氏とかつてCisco Systemsの社外取締役を同時期に務めていた縁があり旧知の仲だったことを明かした。このため交渉は比較的スムーズに行ったようだ。
ボーダフォンの買収については、米投資会社のCerberus Capital ManagementとProvidence Equity Partnersが買収案を提示するとの報道も一部ではなされていた。この点について、モロー氏は「ほかのオファーがあったことは事実」と認めたが、「ソフトバンクとの合意によって生み出せるメリットに満足している」と話し、両社でモバイルコンテンツの合弁会社を作る検討を始めるなど、買収による相乗効果を期待するとした。
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