携帯電話サービス新規参入に名乗りを挙げ、TD-CDMAと呼ばれる技術を使って新しいモバイルブロードバンドサービスの実用化を目指すアイピーモバイル。モバイル通信企業が集結した「mobidec 2005」のセッションで、実用化に向けたスケジュール、および実用化された後の事業展開について、アイピーモバイルの取締役である丸山孝一氏が語った。
現段階でのアイピーモバイルは、東京都内に実験局を4局開設しており、マルチメディア総研と慶応大学中川研究所とで共同研究している。2005年11月に2GHz帯周波数を使用する特定基地局開設計画の認定を受け、具体的なサービスを開始するのは2006年10月からを予定している。
アイピーモバイルが採用するTD-CDMA方式は、CDMAから分岐した「TDD」方式の延長上にある。これに対して、同じCDMAをバックボーンに持つKDDIが採用する「MC-CDMA」、NTTドコモおよびvodafoneが採用する「DS-CDMA」は「FDD」方式に位置づけられる。上りと下りに別々の周波数を与える「FDD」方式とは異なり、ひとつの周波数を時間で分割して上下回線のリソースを柔軟に割り当て、周波数パフォーマンスを向上させた技術が「TDD」方式だ。この技術により、「FDD」方式では不可能であった端末間通信が可能になったという。単純に言うと、ADSLの技術を無線上で実現した形が「TD-CDMA」であると丸山氏は続ける。
TD-CDMAを導入するメリットとしてはいくつか挙げられるが、その1つにジョイントディテクション(エコライザ的な効果)がある。簡単に言えばこれを実装することで、ユーザー間の干渉やパス間の干渉の除去に成功したという。
実用性の観点からメリットを探ると、高速移動中でも通信が可能なことが挙げられ、3GPP規格により、時速120kmでの通信に対応している。海外の実験では、時速250kmで飛ぶヘリコプターの移動中でも通信が可能だったことが報告されているという。最大速度は上り858kbps、下り5.2Mbpsのセクタースループット。標準技術であり、完全IP(オールパケット)により投資コストが比較的安いなど、モバイルプロードバンドとして最適な条件を備えている。
実用化後の展開として注目が予感されるのが「PMG(パーソナルメディアゲートウェイ)」だ。携帯電話やパソコンのほか、デジタルオーディオプレイヤー、ゲーム機など携帯できるデジタル通信機器を、PMGを介してインターネットに接続する構想があると語る。これを丸山氏は「動くホットスポット」と表現した。
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