平成電電は10月3日、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請したと発表した。負債総額は約1200億円。なお、固定電話サービスの「CHOKKA」など、現在提供しているサービスは今後も継続する。
民事再生法の手続きを申請した理由について同社では、「CHOKKAなどの設備投資が大きく、競争環境の激化によって契約者数が伸び悩んだため」と説明している。これまでの設備投資額は約900億円で、損益分岐契約者数は100万件だったが、現在までのCHOKKAの契約者数は開通ベースで約14万5000件という。同社の計画では2006年3月までに100万件の契約を獲得するとしていた。
代表の佐藤氏(中央)は会見の冒頭で30秒近く頭を下げ、「今回の件は私の経営判断のミス」とだけ繰り返した |
今回の申請について平成電電代表取締役の佐藤賢治氏は「事業の成功に向けがんばってきたが、このような結果となり申し訳ない。ひとえに私の経営責任だ」と謝罪した。ただし、事業計画と実績が大幅にずれた理由や、この時期に民事再生法の適用を申請した理由については明言を避けた。なお、自身の進退については「スポンサーを得て再建に全力を注ぐのが責任だ」として、当面は職を退く考えはないとした。
平成電電は1990年に創業。2001年12月よりマイラインサービスを開始し、2003年7月には直収型と呼ばれる、NTTの交換機を中継せず自社通信機器を使うことで電話料金を低く抑えた固定電話サービスのCHOKKAを他社に先駆けて提供した。しかし日本テレコムやKDDIが同様のサービスを開始したことや、IP電話の登場などで契約者数は伸び悩んでいた。
2005年1月期の業績は売上高が前期比61.6%の440億6600万円、経常利益は同6.8%減の10億5300万円、純利益は同70.4%減の128億円となっていた。なお、マイラインサービスは2005年7月に平成電電コミュニケーションズという会社を設立して切り離しており、同社は現在ドリームテクノロジーズの子会社となっている。
2004年11月には日本テレコムの直収電話サービス「おとくライン」が平成電電のノウハウを不正に利用したものであるとして、ソフトバンクと日本テレコムを相手取って訴訟を起こしていた(関連記事)。この裁判は現在も継続している。
平成電電では投資資金を抑えるべく、通信設備をリース契約にしている。今回、民事再生法の申請をしたのはこのリース資金を支払えなくなったためという。
設備を提供しているのは平成電電設備と平成電電システムという企業だ。この2社は平成電電に貸す機器の購入資金を集めるべく匿名組合を結成し、「年率10%程度の利回り」といううたい文句で一般から投資を募って資金を調達していた。平成電電によれば、両社合わせて1万9000人から490億円を調達していたという。なお、この2社と平成電電の間には現在資本関係はない。
これらの出資者への対応について、平成電電の民事再生申立代理人である森・濱田松本法律事務所の弁護士、松村正哲氏は「基本的に平成電電とは別の会社が資金を募集していたもの」とした上で、「平成電電の事業再建に関するスポンサーが確定した時点で取扱いが決まるだろう」と述べるにとどめた。
なお、平成電電は2004年に「平成電電パートナーシステム」という投資商品を販売していた。これにより150人から20億円を調達したという。ただしこの商品には「平成電電が民事再生法の手続きを申請した場合、購入者は平成電電に対して金銭を請求できない」という条項が含まれているため、購入者に対して資金が返還される予定はないとのことだ。
平成電電を大株主に持ち、公衆無線LANサービスの共同展開を計画していた(関連記事)ドリームテクノロジーズは同日、平成電電に対する債権の取り立てができなくなる可能性があると発表した。平成電電に対する売掛金の約45億円が取り立て不能となる恐れがあるという。「今後当社は株主の利益を守るため、債権者として厳しく一連の手続きを見守り、被害額の回収に全力を挙げていく」(同社)
ドリームテクノロジーズは「平成電電による再生手続き開始の申し立てにより、当社が倒産などの危機にさらされることはない」としているが、平成電電はドリームテクノロジーズの株式を約40%保有する大株主でもあることから、平成電電に対して、ドリームテクノロジーズの意図しない第三者に保有株式が移動することのないように要請している。
また、公衆無線LANサービスについては「平成電電の再生手続きを見守り、株主の利益を最優先に考えてグループ事業の再構築を図っていく」(ドリームテクノロジーズ代表取締役社長の山本勝三氏)としている。
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