インターネット電話を使って911番(緊急電話)通報をすると、従来の固定回線より電話がつながりにくいことがある。11月末までにすべての顧客に緊急電話サービスを提供することが義務付けられているVoIP事業者は、事前にこのことを顧客に通知しなければならない。その通知を受け取っておきながら承諾を行っていない10万人ものネット電話サービス利用者は、来週からネット電話サービス自体を利用できなくなる可能性がある。
米連邦通信委員会(FCC)は、公衆電話網に接続するネット電話サービス事業者に、911番通報の制約について顧客全員からの承諾を強制的に取り付けさせる計画だ。
FCCが7月末に発表した文書(PDFファイル)によると、8月29日までに911番通報の制約について承諾しなかった顧客は、それ以降ネット電話サービスが利用できなくなるという。
FCCの広報担当が25日に語ったところによると、同委員会はこの期限を変更する予定はないという。
VoIP企業十数社を代表する業界団体Voice on the Net CoalitionのエグゼクティブディレクターJim Kohlenbergerは、FCCがVoIP事業者に対し8月10日までに提出するよう要請していた報告書に目を通せば約150万人のVoIPサービス利用者が911番通報の制限に関する通知を受け取り、必要な承諾を行ったことが分かるという。また同氏によると、報告書を提出した96社の多くは、全体の8〜9割の顧客が制限に承諾したと報告しており、その割合はここ数週間でさらに増加する可能性が高いという。
しかし、それは裏を返せば、これは7万5000人〜10万人の一般家庭の加入者がVoIPサービスを利用できなくなる可能性があることを意味する。そのため、VoIP業界は、(期限までに承諾しなければ有無を言わさずサービスを停止するという)厳格なルールは、プラスよりもマイナスの影響の方が大きいのではないかとの懸念しているという。
VoIPサービスの加入者の中には、すでに現在利用中のインターネット電話を通じてある種の911サービスを受けているため、自分は対象外と考え、通知に対する返答をしていない人もいるのではないか、とKohlenbergerは憂慮している。
現在問題となっているのは、Enhanced 911(E911)システムへのアクセスだ。このE911システムでは、緊急通報を受けたオペレータが、発信者電話番号をもとに発信者の位置を割り出せる仕組みになっている。米国内のほとんどの地域で使用されている従来の固定電話にはかなり前からこの機能が搭載されている。だが、VoIP通信の場合は、全てのサービスプロバイダがネット経由でかかってきた電話をE911システムに接続する技術を備えているわけではない。また携帯電話事業者も製品のアップグレードを行うための時間的猶予を求めている。
60万人以上のVoIPサービスの顧客を抱えるTime Warner Cableは、「デジタル電話サービスの顧客に対し、常にE911システムへの接続サービスを提供してきた」という。またComcastのDigital VoiceサービスもE911ネットワークへのアクセスが可能だが、同社は911番通報が制限される可能性についての警告文を顧客に送付した。Comcastの広報担当、Jeanne Russoは次のように語る。「われわれがこの問題について頻繁に通知していることについて、一部の顧客から苦情が来た。つまり、彼らは情報を読んではいるものの、あえて返答していないということだ」
FCCはこの厳格なルールを考え直すべきだとKohlenbergerは述べる。「VoIPサービスを利用して緊急通報できる環境の中で暮らしてきた人が、ある日突然、そのサービスを取り上げられ、さらに追い討ちをかけるように、このタイミングで緊急を要する事態が発生したら、その人はどうなってしまうだろう」と、Voice on the Net CoalitionはFCCの会長Kevin Martinに宛てた書簡のなかで述べている。 また同団体は書簡の中でFCCに対し、顧客からの承諾の取り付けの締め切りを11月末まで延長するように要請している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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