テキサス州の検事総長が、インターネット電話サービスのVonageを提訴した。同社が顧客に対し、緊急電話番号の911番へは簡単に電話できないことを明確に示していなかったのが提訴の理由だという。
Vonageでは911番通報が従来の方法でルーティングされていないため、ほとんどの緊急電話は、本来の受付担当者ではなく全米に6000ある緊急電話センターの管理事務所にかかってしまう。3月に入って、強盗に両親を撃たれたヒューストンの17歳の少女がVonage回線で911番をダイヤルしながら、警察に通じなかったという事件が起こったが、このことがきっかけとなり、VoIPの緊急通報が迂回させられることの危険性が露呈した。
米国時間22日に米地裁に提出した訴状のなかで、同州検事総長のGreg Abbottは、Vonageが自社のサービスでは通常のようには911番通話ができないことを明確に開示しておらず、また最初に顧客が無料911サービスに登録する必要があることを十分に告知しなかったと主張。これらの怠慢は紛らわしい取引慣行に関する州法に違反するととして、同州は2万ドルを越える罰金と、より明確な情報開示を求める履行命令を要求している。
Vonageの広報担当者は、同社がこの提訴に驚いていると述べ、911番サービスの利用制限および顧客自ら登録することが求められるという説明は、インターネットと顧客への郵送資料の両方に数多く記載されていると指摘した。Abbott検事総長は、約1週間前にVonageにマーケティング資料などを請求しており、Vonageは2日前に資料を返信したが、その後何も連絡はなかったとこの担当者は語った。
ヒューストンの事件は、インターネット電話サービスから911番通報ができないケースが多々あることを改めて浮き彫りにしている。VoIPサービスでは、高い税金が課される既存の電話網でなく、規制のないインターネットを利用している。米国の場合、既存の電話網は「Baby Bell」と呼ばれる旧AT&T系の地域電話会社4社によって独占されており、911サービスもこの4社から提供されている。そのため、米国のインターネット電話会社の多くはいまだに、緊急電話のルーティングをうまく行えずいる。また、通報者の電話番号や位置情報を特定する仕組みが確立されていない場合も多い。
だが、一方では進歩も見られる。Baby Bell各社は、自社の緊急電話用インフラにVoIPサービスプロバイダが直接アクセスすることを認める姿勢を見せ始めているが、これが実現すればIP電話からの緊急通報を実現するための最大の障害が取り除かれることになる。また、IP電話から緊急電話をかける際の技術的なハードルを克服する新製品もいくつか提供されている。たとえば、既存の電話会社にも911サービス用ソリューションを提供するIntradoは、VoIP事業者向けの本格的な911サービスを開発している。
なお、州の検事総長がVonageに対する行動を起こしたのは今回が初めて。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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