米連邦通信委員会(FCC)は米国時間19日、VoIPサービス事業者に911番緊急電話サービスの提供を義務付ける指令を出したが、これにより、最も大きな打撃を受けるのは、顧客に実際の住所とは無関係の電話番号を割り振っているVoIP業者かもしれない。
一方、家庭用ゲーム機やインスタントメッセージ(IM)にもVoIP機能が組み込まれているが、それらの製品のメーカーには今のところ同指令の影響はなさそうだ。
FCCは、VoIP業者におよそ3カ月間の猶予を与え、その間に911ダイヤルサービス提供の準備を整えるよう義務付ける指令案を満場一致で可決した。サービスの具体的内容は、顧客が911番をダイヤルすると、緊急指令センターに直接つながり、さらに発信元の電話番号と住所が通知されるというもので、大半の事業者がこのサービスの提供を義務付けられることになりそうだ。
この決定の詳細が完全に明らかになるのは数日後だが、すでに同指令の予期せぬ影響が顕在化しつつある。19日に発表された詳細を見る限り、同指令は、住所と無関係に電話番号を割り振っている「居住地無関連型」VoIPプロバイダに大きな影響を与えそうだ。
FCC委員のJonathan Adelsteinは19日、911指令が可決される前に、「居住地無関連型(VoIP)サービス業者は、これを実施する上で大きな課題を抱えることになる」と述べた上で、「しかし、(業者が)これらの義務を果たすことは必要不可欠であり、(911サービスの)実施状況がどの程度進んでいるかを監視することは、われわれにとって極めて重要だ」と語った。
「居住地無関連型」VoIPサービスは高い人気を誇っている。同サービスを利用すれば、居住地域以外の電話番号を持つことが可能になり、様々なメリットを得られるからだ。たとえば、遠く離れた故郷にいる友人/知人から電話を受ける場合、彼らは市内電話番号をダイヤルするだけでいい。またVoIPサービスは、ブロードバンド接続環境さえあれば、場所を問わずどこでも利用できる。
しかし、従来型の電話にはないこれらの利点が、警察に緊急通報を行なう上で問題を生じさせており、現在FCCが対応に追われている。現状では、誰かがVoIPラインから911番をダイヤルすると、数千マイル離れた緊急電話受付センターにつながる可能性があり、緊急対応が遅れてしまうという。
居住地無関連型VoIPサービスプロバイダが取るべき解決策は、インターネット上で移動する標的を発見することであり、FCCも各プロバイダが早急にその措置を講じる必要があることを示唆している。しかし、大半のプロバイダはそのような措置を講じられるほどの専門知識を有していない。最近投資家から2億ドルの融資を受けたVonageのような資金力のあるVoIP事業者やケーブル事業者であれば、自社のシステムを構築したり、困難な作業の大半をLevel 3 Communicationsのような企業に委託することも可能だ。しかし、その他の大半のVoIP業者にはそのような余裕はない。
その結果、自由度が高く、豊富な機能を備えたVoIP企業の多くは、居住地密着型への変更を余儀なくされることになりそうだ。こうした変化はすでに現れている。SunRocketという小さなVoIP業者は19日、住所に対応していない電話番号の割り振りを中止すると発表した。
「インフラが利用可能になるまで、それをより制約の多いサービスと考える人もいるだろうが、(SunRocketが中止に踏み切ったのは)それだけわれわれが911問題を真摯に受け止めている証拠」とSunRocketの広報担当、Brian Lustigは説明している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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