ソフトバンクグループは8月30日、独自通信網を利用した固定電話サービスを開始すると発表した。直収型電話サービスと呼ばれるもので、日本テレコムがNTTの局舎内に独自交換機を設置し、局舎間を独自通信網でつなぐことでNTTよりも安い価格で固定電話を提供する。局舎と各家庭の間はドライカッパーと呼ばれるNTTの空き銅線を利用する。サービス名は「おとくライン」。12月1日よりサービスを開始する。
アナログ回線とISDN64の2つを提供する。月額の基本料金はNTTよりも200円安く、1417円から3601円。通話料金は法人の場合に最大で55%割引、個人の場合は最大で50%安くなる。新規に電話を引く場合でも電話加入権は不要。既存のNTT加入電話から移行する場合、同じ電話番号を使い続けることが可能だという。
「日本テレコムの買収はこのためにあった」
ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏 |
直収型電話サービスの最も大きな特徴は、加入者が固定電話の基本料金をNTTに支払わない点にある。「NTTに独占されてきた基本料市場に本格参入する」(ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏)。孫氏によると、固定電話市場のうち通話料金市場規模が約1兆4000億円であるのに対し、基本料金市場は約1兆8000億円という。しかも通話料金市場は各社の競争激化で料金が下がっているのに対し、基本料金はNTTの寡占状態にある。ここに大きなビジネスチャンスがあるとソフトバンクはにらむ。
ソフトバンクにとって直収型電話サービスが重要となるもう1つの理由が、NTTに対する相互接続料を削減できることだ。日本テレコムではNTT交換機を利用するための接続料として年間約730億円をNTT東西に支払っているという。独自交換機を利用することで接続料の削減が図れるほか、NTT回線から日本テレコムの交換機に接続した場合は逆に接続料収入が見込める。
孫氏によると、同サービスの計画は2年半ほど前から進められていたという。「日本テレコム買収の本質はここにあった。時間とインフラをお金で買った」と孫氏は話す。
ソフトバンクグループではIP電話のBBフォンもある。BBフォンが個人向けサービスであるのに対し、おとくラインは法人を主なターゲットとしているようだ。「個人向けサービスなら、IPバックボーンのほうが全体的に見てコストダウンになる。しかし寸断も許されない法人向けには、より安定的なサービスが必要だ」(孫氏)として、音声専用の通信網を採用したという。「このサービスを準備していたからこそ、あえて積極的にIP電話を法人に売り込んでいなかった」(同氏)
ベルシステム24がシステム構築投資に参加
日本テレコムでは日本全国の主要都市を中心に独自交換機の設置を進め、12月のサービス開始時には約1000局舎をカバーする予定。その後2005年度中には3500局舎にまで拡大するという。これは人口カバー率の94%に当たる。設備投資金額は「自社で負担する分は数百億円規模」(孫氏)といい、これとは別に販売代理店が契約者数に応じたシステム構築投資を行う予定。この中には先日ソフトバンクBBと業務提携したベルシステム24もある。ベルシステム24はソフトバンクグループの新サービス関連システムの構築に約590億円を投資すると発表していた。
おとくラインでは、Yahoo! BB以外のADSLサービスも利用できるようにする考えだ。「これから各社との話し合いに入るが、(ADSL事業者に対しては)ほぼNTTと同条件で提供する」(孫氏)
警察・消防への緊急通報やプッシュ電話、発信番号通知、NTTのキャッチホンに当たる「ダイヤルイン」、着信転送などの付加サービスを用意する。それぞれ基本料金とは別にサービス利用料金がかかるが、値段はNTTと同額という。ただしダイヤルQ2など一部の電話番号への発信は不可能。
日本テレコムでは同サービスの開始にあたり、ソフトバンクグループの王道である無料キャンペーンを実施する。利用者が事前に指定した3つの電話番号にかける通話料金が1年間無料になるほか、付加サービスの月額料金が3カ月間無料となる。また、新規申し込み時の日本テレコム工事費1050円も無料になる。ほかに、特定時間帯の市外通話料金が1年間9割引になるキャンペーンも行う予定だ。
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