NTT(持株)は10月20日、高品質のマルチキャスト型配信サービスを実現するルータソフトウェアを米Motorolaと共同で開発したと発表した。これにより、安定した品質の映像配信が全国規模で行えるようになるという。
現在マルチキャスト型配信サービスではIPマルチキャストという技術が広く利用されている。しかしこの技術ではデータ品質が劣化する可能性があるほか、全国規模での配信が難しいといった問題があるとNTTネットワークサービスシステム研究所ネットワークシステムイノベーションプロジェクト イノベイティブネットワーキンググループ グループリーダーの漆谷重雄氏は説明する。
今回NTTが採用したのはマルチキャストMPLSプロトコルという技術。MPLSではルータがパケットを送信する際に宛先のIPアドレスを見るのではなく、「ラベル」と呼ばれるパケットに付けられた目印を見て送信を行う。これによりルータ側でデータの配信経路が管理でき、品質保証(QoS)が可能になるという。
NTTネットワークサービスシステム研究所の漆谷重雄氏 | |
具体的には、データが通る経路の帯域や遅延時間を管理、制御することで、データの通信品質を保証する。また送信側ルータでデータが通る経路を指定するため、混雑した経路や不安定な経路を避け、ネットワークの安定性も確保できる。
さらにNTTでは、ネットワークの使用状況などを考慮して最適な配信経路を設定する最適経路計算アルゴリズムを開発し、各ルータが自律分散的に最適経路を算出するような機能も搭載した。
今回NTTが開発したマルチキャストMPLSプロトコルは、現在市場に展開されているルータソフトの機能を拡張したものだという。そのため、既存のルータのソフトウェアを入れ替えるだけで簡単に実装できると漆谷氏は説明した。
NTTネットワークサービスシステム研究所では現在、NTTグループ内の各通信事業者と今回のソフトウェアの採用について議論しているという。ただし、具体的な今後の採用スケジュールについては明らかにしなかった。
NTTでは今回開発したマルチキャストMPLSプロトコルをIETF(Internet Engineering Task Force)に提出し、標準化を図っている。漆谷氏によると、MPLSワーキンググループの正式なワークアイテムとして11月にも決定される見込みだという。
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