NTTドコモとソニーは10月27日、2004年1月をめどに共同で新会社を設立すると発表した。ソニーの非接触ICカード技術「FeliCa」を搭載した携帯電話機を利用し、様々なサービスを提供するための基盤作りを行う。新会社の社名はフェリカネットワークスで、出資比率はソニーが60%、NTTドコモが40%となる。新会社の代表取締役社長にはソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ商品企画部統括部長の河内聡一氏が就任する予定。
新会社では携帯電話とFeliCa機能を融合するIC(モバイルFeliCa IC)チップの技術開発やチップメーカーに対する製造・販売ライセンスを行うとともに、サービス事業者がサービスを提供するためのプラットフォームの構築・運用を行う。サービス事業者に対してサーバのホスティング提供といったことも考えており、「ライセンスとホスティングが主な収入源になる」(河内氏)という。
FeliCaはJR東日本のSuicaや電子マネーのEdyなどで利用されている非接触ICカード技術で、「全世界ですでに3800万枚普及している」(ソニー取締役 代表執行役 会長 兼 グループCEOの出井伸之氏)という。新会社の設立により、電子マネーや会員証、JRの乗車券として携帯電話機を利用できるようになる可能性がある。ただし提供予定のサービスについては、「我々はサービスを選ぶのではなく、プラットフォームを提供するだけ」(NTTドコモ代表取締役社長の立川敬二氏)と述べるにとどめ、具体的な内容は明らかにされなかった。
auやボーダフォンにも技術を提供
FeliCa搭載の携帯電話端末を紹介するNTTドコモ iモード事業本部 iモード企画部長の夏野剛氏 | |
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今回の合弁会社設立に至った理由としてソニーの出井氏は「ソニーだけではなかなか(FeliCaが)普及しない。NTTドコモと共同で行うことで、中立的な技術を提供する会社になる」と狙いを明かす。今後は様々なサービス事業者に採用を働きかけていくほか、auやボーダフォンなど他の通信事業者に対しても技術を提供していくという。
NTTドコモでは、FeliCa搭載携帯電話の試行サービスを2003年12月より開始する。504iをベースにFeliCaを搭載したソニー・エリクソン製の端末「SO504iC」とNEC製の「N504iC」を6000台用意し、実際にサービスを提供する予定の企業と共同で実証実験を行っていくという。2004年3月をめどにサービス仕様を公開し、実際の商用サービスが始まるのは2004年夏頃になる見込みだ。端末は第2世代の50xシリーズと第3世代のFOMAの2種類が提供するとしている。
NTTドコモの端末には現在すでに通信機能として赤外線が利用できるようになっており、会員証や電子チケットなどのサービスが提供されている。しかしNTTドコモ iモード事業本部 iモード企画部長の夏野剛氏は「赤外線ならアプリケーションを起動しなくてはならないが、非接触ICカードならかざすだけだ」とメリットを強調した。今後はEdyなどのコンビニの決済は非接触ICを利用し、クレジットカードの決済は赤外線を使うといったように複数の通信方式が共存するとNTTドコモの立川氏は紹介した。
FeliCa事業は3、4年内に黒字化へ---ソニー
新会社の代表取締役社長に就任予定の河内聡一氏(中)とソニーの出井伸之氏(左)、NTTドコモの立川敬二氏(右) | |
ソニーはFeliCaの開発を1988年より進めているが、現在のところ「先行投資を除けば収支はほぼトントン」(ソニー 業務執行役員常務 NACSオフィサー/CFOの大根田伸行氏)という。全体的に黒字へと転換するのは3、4年後になるのではないかと大根田氏は予測した。
FeliCaは現在のところ国際標準の技術とは認定されていない。しかしソニー 業務執行役員上席常務 NACSプレジデントの野副正行氏によると、「ISOは現在FeliCaについて審議中だが、世界標準としてもうすぐ認定が下りるという話を聞いている。正式な標準としてもうすぐ発表されるだろう」とのことだ。これを受け、新会社では海外でのサービス展開も検討しているという。
非接触IC技術はソニーだけでなく、NTTグループも開発を進めている。この点についてNTTドコモの立川氏は「ソニー(の非接触IC技術)が最初にできたので、それを採用したということ。今後はNTTグループが開発するType Bも当然採用を考えていく」とした。
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