最前線にいる研究者が語る、AI開発を取り巻く世界と日本の動き - (page 3)

今までにない柔らかな発想が開発競争に勝つ鍵になる

 会場からは多くの質問が寄せられる中で高橋氏は、今後のAI開発の方向性について、従来のコンピュータで採用されているノイマン型はなくならないものの、マシンラーニングやディープラーニングでは非ノイマン型のニューロンが不可欠になり、最後にはハイブリッドになるだろうとコメントしている。

 AI開発分野での日本の勝機については、日本ではプレイヤーは揃いつつあり、これまではスピード勝負だったノイマン型から、バイオとハードの両面から機械学習の作り込みが必要なニューラル型へと開発の方向性が変化期にあることから、ここで大きな勝負をすれば日本のAI開発は世界に勝てる可能性があると分析。欧米にはない日本ならではのやわらかい価値観の発想が肝になるともしている。

 大きくて頭の固い組織でできることはもう限界がきている。今後はたとえば、高橋氏が設立したロボットの実験センターのような場所をいくつも作り、学生や主婦でもアイデアを出してオンラインで研究開発に参加できるような場を作ることや、頭の柔らかい人を一つの研究所に集めてごちゃまぜにしながらアイデアを生み出すマイクロコスモスのような場を作るなど、今までとは全く違う発想が必要になると説明した。

シンギュラリティ

 一方でAIの進化に対しては、人間の仕事を奪い、排除するのではないかという懸念もつきまとっている。また、全脳エミュレーションなど、器質的に脳と全く同じ動きをするものを社会で動かす場合の問題は山積している。それに対する議論も研究者の間では始まっているが、その際のルールづくりには、法律や経済、政治学から安全保障まで幅広い意見が交わされる必要があるだろうという。

 シンギュラリティサロンの主催者の神戸大学名誉教授の松田卓也博士は、多くの人たちがAIに関心を持ち、さまざまな意見を持ち寄り、考えるためにも、今後も最前線の専門家を招いた講演会を一般に公開し、たくさんの機会を作っていきたいと話している。

 高橋氏もさまざまな組織に所属し、そこで専門家や異なる分野と関わる機会を作り、オープンな勉強会も開催している。そうした場所でアイデアを集め、いろいろなタイプのAIを作り、実際に動かしていきたいと語った。

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