第6回 達成度と働きぶりの評価の根拠をとらえる

金津健治(産業能率大学総合研究所)2012年11月29日 10時00分

  「目標管理」の運用をテーマにしたこの連載も残すところあと2回になりました。今回と最終回となる次回は、目標管理・人事評価の「評価」段階におけるハウツーやツールを紹介します。

いかに評価の納得度を高めるのか?

 部下の評価においては「事実に基づいて評価する」ことが原則だと言われますが、この原則ほど不条理なものはありません。プレイングマネージャーの管理者は、自ら業務を担います。ぎりぎりの人員で月次試算表を作成する経理課長、新規開拓にまわる営業所長も多いでしょう。

 現代の管理職は、どうしても部下の働きぶりを十分に把握できないものです。では、どうすればいいのでしょうか。

7つの評価の証で評価根拠の事実を裏付け

 そこで紹介したいのが、評価の対象となる事実の裏づけをおさえる「7つの評価の証」です。

 評価の証には「データ(数字で裏付ける)」「資料メモ(記録物で裏付ける)」「アンケート(関係者の評価で裏付ける)」「テスト・資格(外部機関の認証で裏付ける)」「写真(現状とその後の状況を比較し写真で裏付ける)」「立ち会い同席・同行(評価者の観察で裏付ける)」「現物(成果物で裏付ける)」の7種類があります。

 実際にこのツールを取り入れたある企業では、組合アンケートの結果をツールの採用前後で比較すると、上司・部下間の評価の平均キャップが少なくなり、評価への納得後を高めることができました。

図表 7つの評価の証と身近な評価の証
図表 7つの評価の証と身近な評価の証

身近な証が役に立つ

 身近なものが評価の証になります。7つのタイプに照らしてみると、営業の売上数字が記された「売上データ」、会議などの発言内容を記した「議事録」、システムエンジニアに対する「お客様の仕事満足度アンケート」、TOIEC500点のテスト結果を示した「通知書」、オフィスの「レイアウト変更前後の写真」、営業担当者のプレゼン力を評価する「所長の営業同行」、開発担当者が仕上げた「試作品」などがあります。

7つの評価の証は部下にも活用させる

 「7つの評価の証」は、管理者だけでなく2つの目的で部下も活用できます。

  (1) 自己評価の適正化をはかる

 企業が自己評価を取り入れる目的は、「上司が把握できない働きぶりをおさえること」です。目的どおり「上司も気づかない働きぶりを伝えることができる」メリットもありますが、「過剰に低く・高く評価してしまう」デメリットもあります。そこで、評価の証を部下自身に用意させましょう。「本当にこれでA評価なのか、B評価なのか」と自問自答させ、自己評価の適正化をはかるのです。

  (2)キャリア形成に役立てる

 人事評価を「期間限定の短期キャリアの振り返り」と位置づければ、評価の証は部下本人の目標・仕事の成果物です。その成果物から「何ができるようになったのか」「どんな経験を積んだのか」を自問自答させましょう。このように役立てることで、目標管理・人事評価を通じて部下を育てることにつながっていきます。

 目標管理・人事評価は育成につながるものでなければいけません。最終回は「評価」を部下育成につなげる方法を紹介して締めくくります。

金津健治

産業能率大学総合研究所

主席研究員

1954年生まれ。慶應大法学部卒。金融機関、コンサルティングファーム勤務を経て、87年学校法人産業能率大学入職。メーカーからサービス業まで、幅広い業種で、目標管理制度・人事評価制度の導入や定着化のコンサルティング、研修分野で活動。管理職研修や被評価者研修などの実績も多数。著書に「七つの能力-管理職前に身に付ける技法42」(日本経団連出版)、「目標管理の手引き」(日本経済新聞出版社)、「管理職のための七つの道具術」(プレジデント社)など。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]