ソフトバンクは7月11日、法人顧客向けのイベント「SoftBank World 2012」を開催した。ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は、「iPhone、iPadによるモバイルインターネット時代のビジネス革新」と題する基調講演で、企業によるスマートデバイスの導入事例や、ビジネスに与える影響などについて語った。
孫氏は講演の冒頭、来場者に対してiPhoneやAndroidスマートフォン、iPadを持っているか質問し、「iPhoneもiPadも持っていないという方は、今日から人生を悔い改めていただきたい。すでに時代から取り残されている」と語り、会場の笑いを誘った。
「(坂本)龍馬の時代、武士はほぼ全員が大刀と小刀を持っていた。この両刀を持って初めて戦える状況になる。それくらい現代社会において情報を武器として戦うということは大切で、基本的な武士のたしなみではないかと思う」(孫氏)
孫氏は、ちょうど4年前の2008年7月11日に発売された「iPhone(3G)」によって、人々のライフスタイルは大きく変化したと話し、いまではビジネス、教育、医療、ゲームなどあらゆる物事にスマートデバイスが活用されるようになったと語る。
ソフトバンクは約2万人の全社員にiPhoneとiPadを支給している。孫氏は、すべての社員がスマートデバイスを持つことで、不要な紙の印刷をなくしたり、PCによる社内業務が前提のワークスタイルを変えることができると説明。「ほぼ(全員が)持っているのと、100%ではまったく異なる。ビジネスとしてのプラットフォームが変わる」と語る。
同社では現在、商談や会議でも必ずスマートデバイスを活用している。また、4月からは社内業務において紙を一切使わない「ペーパーゼロ宣言」を掲げているという。紙による提案書や報告書の作成にかける時間を減らしたことで、営業1人あたりの顧客訪問件数が約2年間で2倍に増えたそうだ。
孫氏は「社内の業務で紙を使うとクビという状況になっている。私がハサミを持ってコピー機のコードを切るんだと息巻いたら、『社長、それだけは勘弁してくれ。外のお客さんとの契約書や役所の書類にはどうしても紙がいる』と言われて思いとどまった」と明かす。
こういった取り組みの結果、2011年度の1人当たりの営業利益は、NTTグループが390万円、KDDIグループが1050万円であるのに対し、ソフトバンクグループは2574万円となった。「同じ通信事業をやりながら(他社は)ペーパーゼロをワークスタイルとして実現できているか。この違いは大変大きい。普通であれば規模の小さい会社の方がインフラ事業においては経営効率は悪い」(孫氏)
企業へのスマートデバイスの導入事例も紹介された。同社によれば、2012年3月時点で15万社以上がiPhoneを、6万社以上がiPadを導入しているという。たとえば、全日本空輸(ANA)は客室乗務員の乗務マニュアルとしてiPadを6000台、LIXILは約500冊分の商品カタログの変わりに6000台のiPadを導入している。
その他、野村證券、本田技研工業、日産自動車、ダイキン工業、凸版印刷、大成建設、ファイザー、三井住友銀行など、数多くの企業がさまざまな形でiPhoneやiPadを導入しているという。
スマートデバイスの導入が進む一方で、多くの企業が不安視しているのが「セキュリティ」の問題だ。これについて孫氏は、もし端末を紛失してしまった場合でも、遠隔操作でロックやデータ消去が可能なこと。また、iPhoneアプリはアップルの事前審査を受けていることからウイルスに感染する可能性は極めて低いと説明する。
また、同社の課題であった「ソフトバンクはつながるのか?」という不安も、7月25日に開始される“プラチナバンド”(900MHz帯)を使用したサービスによって払拭できるとした。「電波を発する基地局を、通常の常識の4倍くらいの速度で建設している。順次工事が完了したところから続々とつながりが良くなる」(孫氏)
孫氏は、日本の企業や産業全体が著しく競争力を失っていると語り、「情報武装をすることがどれほどワークスタイルを変えるのか、どれほど競争力を取り戻すのか。武士は24時間、大刀と小刀を必ず手元に置いている。私自身、24時間iPhoneとiPadが手元にあり、戦える状況を作っている」とコメント。
スマートデバイス導入によるワークスタイルの改善の重要性を改めて強調し、基調講演を締めくくった。
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