一般社団法人 ブロードバンド推進協議会が4月23日、シンポジウム「国民の、ITによる、日本復活」を開催した。楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏とソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏が登壇するということもあり、会場には1000人近い観客が詰めかけた。すべての世帯に光ファイバを中心としたブロードバンドサービスを行き渡らせるという総務省の「光の道構想」と、規制緩和をベースに、日本の成長戦略のあり方を語りあった。
最初に登壇した三木谷氏は、「小売業におけるEC化率は、米国の3.6%、フランスの8.2%と比べ、日本は1.45%と非常に低い。各国がEC普及のために規制の撤廃や産業促進をやっているのに、日本は一般医薬品の通信販売の規制など、まったく逆方向に進んでいる唯一の国ではないか」と、政府のありかたを批判した。
三木谷氏によれば、現在進行中の規制強化としては、医薬品の通信販売規制のほか、東京都の「青少年育成条例」改正によるフィルタリングの強化、個人の行動を記録、分析するライフログへの規制の動きなどがあるという。
そして、もう1つの大きな問題がNTTの進めるNGN構想だと三木谷氏は言う。NGNはNext Generation Networkの略だが、三木谷氏は「NGNはNext Galapagos Networkと読み替えましょう」と会場の笑いを誘った。NGNはグローバルスタンダードに基づくものではなく、ガラパゴス的な特異な技術だというのだ。NTTが独自仕様によるユーザーの囲い込みを目指しているとし、インフラ企業が主要サービス機能を集権的に管理する電話網の時代に戻そうという動きに他ならないと厳しく断じた。
続いてソフトバンクの孫氏が登壇した。同氏が一般講演をするのは、ほぼ10年ぶりという。「日本のネットワークインフラは、今はメタル(銅線)と光ファイバのミックスであるが、完全にメタルを引きはがし、100%光ファイバに置き換えなければならない」と切り出した。
関東大震災後、内務大臣で帝都復興院総裁の後藤新平氏が立案した帝都復興計画を例にあげ、「彼は馬車が中心だった時代に幅108メートルの道路を造ることを提唱し、大風呂敷と批判された。だが、後藤新平が大風呂敷を広げなかったら東京の道は今よりもっと混雑していた。20世紀に車の道、水の道、通話の道ができた。21世紀の人々のために光の道、情報の道を引かなければならない」と、“光の道”を整備することを主張した。
孫氏は光ファイバの回線使用料はADSLと同程度の月額1400円にできると主張。現在のメタル回線には維持費用が3900億円かかっているが、光にすればゼロになるとした。また、現在は光ファイバを引くのに12万円の工事費がかかっているが、それは個別に敷設するからであり、地域単位で一度に光ファイバを敷設すれば1件3万円でできると試算した。「電気を引くとき、水道を引く時はその地域で一気にやる。インフラというのはそうやって作らないとお金がかかってしまう」
光の道が完成したあとの具体的な利活用の方法として、孫氏が描くのは電子教科書だ。全国1800万人の学生に1台2万円の電子教科書を無償配布するとしても、費用は3600億円。教育情報はすべてクラウド上に置き、NHKの番組アーカイブを無料で公開することを提言した。
もう1つの利用方法が電子カルテだ。電子カルテ端末をすべての医師、看護士に無料で提供し、医療情報はすべてクラウド上に置く。カルテの共有により誤診が減り、遠隔医療が可能になるとし、国家歳出で一番大きなウェイトを占めている医療費を3分の1にできると力説した。
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