一般用医薬品のインターネット通販規制は違法と言えず――改正薬事法省令の無効確認・取消を求めて、ケンコーコムとウェルネットが国を相手取って起こした行政訴訟について、東京地方裁判所(東京地裁)がその訴えを退ける判決を下した。
2009年6月1日に改正された薬事法では、一般用医薬品を副作用のリスクが高い順に第1類〜3類の3種に分類した。代表的なものでは、一部の胃腸薬や鼻炎薬、禁煙補助剤などが第1類に、風邪薬や漢方薬、妊娠検査薬などが第2類に、ビタミン剤やうがい薬が第3類にそれぞれ分類されている。
この法改正に合わせて厚生労働省(厚労省)が定めた省令では、第1類と第2類について「対面販売」による情報提供を前提とし、インターネットなどでの通信販売を規制した。これまで同じ医薬品を利用していた場合や離島に在住する場合などは例外的な販売を認めているものの、2年間に限定した経過措置であり、それ以降は通信販売で医薬品を購入できなくなる。
そこでケンコーコムとウェルネットは2009年5月25日に国を相手取って東京地裁に提訴。これまで2009年7月14日に第1回口頭弁論、2009年9月1日に第2回口頭弁論、2009年10月20日に第3回口頭弁論、2009年12月24日に第4回口頭弁論が開かれて結審した。
原告の2社は今回の行政訴訟で以下の2点を求めてきた。
そして、(1)改正薬事法省令が憲法22条第1項(職業選択の自由)に違反する主張である、(2)“対面販売の原則”は改正薬事法の法文に記載されておらず、国会の附帯決議においてもネットなどでの通信販売の禁止には一切言及されていない、(3)「対面ではない」という理由でインターネット販売が規制される一方、店頭ならば医薬品を使用者だけでなく代理人に販売でき、医薬品の情報提供が努力義務となっていることから、そもそも“対面販売の原則”自体が矛盾している――といった主張を繰り返してきた。
これを受けて東京地裁が3月30日に出した判決は次のとおり。
判決文は180ページに及ぶものとなったが、この要旨については、ケンコーコムのウェブサイトで公開されている。
要旨では、(1)改正省令が法律の委任を受けた行政機関(今回の場合は厚労省)が行う立法作用のため、省令そのものの効力に関して争う「抗告訴訟」の対象に当たらない、(2)省令は改正薬事法による販売方法を委任したものであり、その委任の範囲を超えており、無効であるといえない、(3)インターネット販売の規制は一般用医薬品の副作用による薬害を防ぐためのもの。対面販売では購入者の身体上の特徴や顔色を直接視認して質問できるほか、また使用者と購入者が異なる場合でも、能動的・双方向的に使用者を確認できる。しかしインターネット販売では購入者に情報提供をしないまま販売に至る可能性が高く、販売者が有資格者かも確認できない。さらに購入者が虚偽の申告をした場合の真偽確認が困難――といった理由から、訴えを却下・棄却したとしている。
この判決を受けた約2時間後に開催された記者会見では、ケンコーコム代表取締役の後藤玄利氏がまず「国側の主張をなぞっただけの極めて不当な判決。消費者のために、医薬品インターネット販売の安全性を最大限高めようと努力してきただけに、このような判決を受けて大変残念」とコメントした。
後藤氏は、今回の判決について、「最も納得がいかないのは、対面販売とネット販売を比べると情報提供の難易、実現可能性に有意な差があると断じているところ」と語る。そして「まさに結論ありきの判決。このような不合理な理由で既存の業界を守り、新しい業界の台頭を妨げることに、司法までもが荷担する。このような国に未来があるのか」と声を荒げた。
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