文化庁の著作権分科会の法制問題小委員会の2009年度第4回目の会合が8月25日、開催された。
日本の著作権制度に関わる法的問題を議論することを目的に設置された同委員会。2009年度は、“日本版フェアユース”と呼ばれる著作権法における一般規定について4月から議論が続けられている。4回目の開催となった今回の会合では、前回に引き続き、同制度に関わりのある利害関係者を招いたヒアリングが行われた。
今回のヒアリングでも、フェアユース規定導入の是非をめぐって、関係者による綱引き状態が続いた。フェアユースは、現行の著作権制度では対応しきれない著作物の二次利用に対する権利制限について、公正性が認められる利用については個別の許諾なしに認めることができる一般包括的な指針を米国の著作権制度に倣って導入しようというものだが、著作物の二次的利用を促進したい産業界と、権利者権限を不当に狭められたくない権利者双方の思惑が競り合いが続く状態となっている。
今回のヒアリングに参加したのは、経済関連団体、音楽著作権団体、文芸関連団体、障害者関連団体、民間産業団体、図書館関連団体の計6組。各団体の代表者が集まり、日本版フェアユース規定の是非や必要とされる検討内容などを意見し合った。
今回のヒアリング出席者の中でも、フェアユースの導入に強い反対を示しているのは権利者団体だ。出席した日本音楽著作権協会(JASRAC)総務本部副本部長の北田暢也氏は、JASRACなど音楽関連7団体の代表として、フェアユースの導入に改めて強い反対の意を表明した。北田氏は「実質的に権利者の利益を不当に侵害しない利用については、現行著作権法における個別権利規定のもとで権利者による許諾等の対応がすでになされており、特段の問題は生じていない」と主張。さらに、「私的録音録画に関する制度が整備されていない現状において、フェアユース規定を導入すれば誤解と混乱が生じるのは明らか」と、順序的に現段階では導入を急ぐべきではないという考えを示した。
また、日本シナリオ作家協会、日本文藝家協会、日本ペンクラブの文芸関係4団体も「一般規定により不当に権利者の権利が狭められるおそれがある」という意見を表明。特に「フェアユースでなくフリーユースになってしまう可能性がある」(日本文藝家協会理事長の坂上弘氏)など、企業による無断利用の正当化に懸念の意を表した。
一方、電子情報技術産業協会(JEITA)著作権専門委員会委員長の亀井正博氏は「現行の著作権法のもとでは日進月歩な技術革新に対応できず、イノベーションの妨げになっており、産業界に萎縮をもたらしている」とフェアユース規定の必要性を主張。さらに、権利者団体が懸念する権利の濫用のおそれについては「確信犯的に著作権を侵害する行為は、一般規定の有無に関係なく行われてしまうもの。一般規定によってそれが増大するということにはならない」と反論した。
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