米国政府、新しい光源技術開発に本腰--環境対策へ「研究開発費は無制限」

永井美智子(編集部)2007年10月16日 09時47分

 米国政府が日本の技術を基にした、新しい光源技術の開発に乗り出す。既存のLEDよりはるかに明るく省電力な白色LEDや面で発光するレーザーダイオードを開発し、世界のエネルギー利用量の20〜30%を占めるといわれる照明分野で、あらたな覇権を握りたい考えだ。

 日本の技術ベンチャーであるニューパラダイムテクノロジーと米ウエストバージニア大学研究機構、米シンクタンクのIC INOVAが共同で、超高発光度白色LEDおよび面発光レーザーダイオード(LD)を開発する。3者は「日米共同LEDプロジェクト」という名称のプロジェクトを結成することで10月15日に合意した。このプロジェクトには米エネルギー省など13の連邦政府機関と、Microsoftなど17の米企業がパートナーとして参加する。

 研究資金は連邦政府機関などが提供する。「2年間で目標とする技術を完成させる。そのための資金は無制限に提供される」とIC INOVAの日本法人であるアイシーイノバジャパン代表取締役の藤木俊也氏は話す。

 3者は共同で、2009年10月までに現在の白色LEDの発光効率である150lm/Wを大幅に上回る250lm/Wの白色LEDを開発する。また、面発光レーザーダイオードについては、実用化レベルの青色、および緑色のものを完成させる。

 「現在百本以上の白熱灯を使う必要があるオフィスを、1つの照明で照らせるようになる」とアイシーイノバジャパン取締役副社長の秋谷弘一氏は話す。

 豊田合成で青色発光ダイオードの研究開発に携わった経験を持ち、今回ウエストバージニア大学の教授に就任したニューパラダイムテクノロジー取締役の真部勝英氏は「フィルム状の、薄く軽く安い光源も実現できる。また、太陽光に近い光ほど人間に優しいといわれていることから、そういった地球にも人間にも優しい光源を開発する」とした。

 Microsoftなどのパートナー企業は、このプロジェクトで開発された技術の商品化に協力する。日本からは京都大学や三重大学などが研究開発に参加する計画という。ただし米国の国家プロジェクトと位置づけられていることから、パートナー企業として名を連ねる日本企業はない。

 LEDは既存の照明施設に比べて、消費電力が数分の1と少なく、数倍長持ちするという特徴がある。このため、地球環境にやさしく、エネルギーの観点から二酸化炭素の排出削減に貢献すると考えられており、今回の成果により「地球環境保護に貢献できる」とウエストバージニア大学物理学教授のThomas H. Myers氏は話す。

 地球温暖化は近年、世界的に注目を集めているトピックだ。10月12日にはこの問題に長年取り組んできた前米国副大統領のアル・ゴア氏と国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」がノーベル平和賞を受賞することが発表された。また、地球温暖化の抑止などに役立つ技術は「クリーンテクノロジー」と呼ばれ、米国ベンチャーキャピタルがこぞって投資している分野でもある。

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