IT企業の不正ストックオプション付与問題、当局が捜査拡大

文:Declan McCullagh(CNET News.com) 翻訳校正:向井朋子、長谷睦2006年07月14日 21時39分

 米連邦捜査局(FBI)とサンフランシスコのカリフォルニア州北部地区連邦検察局は米国時間6月12日、この地域の企業によるストックオプション付与について、違法行為にあたる疑いがあるとして捜査を段階的に拡大していることを発表した。

 連邦検事のKevin Ryan氏は、8名からなる特別捜査班を新たに設け、カリフォルニア州北部の企業が投資家を欺く意図のもと、日付をさかのぼってストックオプション付与日を変更したかどうかを捜査すると述べた。この種の捜査班は、おそらく米国でもほかに例がない。

 「われわれは個々の案件を検討し、起訴が適切と判断した場合は刑事訴追するつもりだ」と、Ryan氏は述べている。

 捜査対象となっているストックオプション付与日のさかのぼり行為(バックデート)は、必ずしも違法ではないものの、多数の企業を巻き込み、証券規制当局および民事弁護士の注目を集めてきた。

 記者団との電話会見の中で、Ryan氏は捜査対象に上がっている企業名の言及を避けた。しかし、Ryan氏の所属する連邦検察局から召喚状を受け取ったと公表している企業は、少なくとも15社にのぼる(企業名は別表を参照)。

 さらに捜査では、株価の上昇が見込まれる、企業にとって有利な発表を行う前にストックオプションを付与する「スプリングローディング」と呼ばれる行為に各企業の幹部が関与していたかどうかについても調査すると、Ryan氏は述べている。

 「その先には、インサイダー取引と不正会計問題が待っている。昔から存在する、不正経理による不法行為だ」とRyan氏は続けた。

 ストックオプションとは、当該企業の株式を行使価格と呼ばれる値段(通常は付与日の時価)で購入する権利を対象者に与えるものだ。行使価格が10ドルで、株式が現時点で15ドルで取引されている場合、個々のオプションの価値は5ドルとなる(株式が10ドル以下になると、オプションの価値はなくなる)。

 仮にオプションを手にした企業幹部が、実際のオプション付与日よりも株式が安値で取引されていた時点にまでさかのぼり、付与日を事後に変更できるなら、オプションの価値はさらに上昇することになる。

 これこそまさに、連邦検察が捜査の対象としている行為だ。多数の企業が不正オプション付与に関わっていることを示唆する学術的な調査報告も、複数ある。そして、ストックオプション付与の際に開示された情報が投資家の誤解を招くよう故意に操作されていた場合、証券詐欺罪にあたるおそれが出てくる。また、ストックオプションの種類によって控除額も変わることから、税法に触れる可能性もある。

 アイオワ大学ビジネススクールで会計学の教授を務めるErik Lie氏は、数千にのぼるオプション付与を調査し、多くの企業について統計的に見てバックデート行為があったとしか考えられないケースを発見した。1996年から2002年の8月までに企業の最高責任者に付与されたオプションのうち、少なくとも10%はバックデートされていたとLie氏は推測している。

 13日に行われたインタビューの中で、Lie氏はバックデートが起きやすい企業について、3つの特徴を挙げた。「こうした行為が多いのは、大規模企業よりも小規模企業、株式の価格変動が激しい企業、そしてハイテク関連企業だ」

 Apple ComputerやCA(前Computer Associates International)をはじめとするハイテク企業の一部は、ストックオプション付与について内部調査を行うと発表した。CNET News.comを運営するCNET Networksも、10日に発表した声明の中で、内部調査を実施中であること、および2003年、2004年、2005年の業績を訂正報告する予定を明らかにしている。

ストックオプションのバックデート

ベイエリアの複数の企業が、カリフォルニア州北部地区連邦検察局からの接触があったことを公表している。通常、当局からの接触は召喚状という形式を取る。具体的な企業名は以下の通り:

Altera
Applied Micro Circuits
Asyst Technologies
CNET Networks
Equinix
Foundry Networks
Intuit
Linear Technology
Marvell Technology Group
Maxim Integrated Products
Openwave Systems
Power Integrations
Redback Networks
VeriSign
Zoran

出典:Wall Street Journalデータベース

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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