AT&Tが米国政府の盗聴活動に協力したとする訴訟において、同社を担当する弁護士が隠したつもりの情報を誤って公開してしまった。
AT&Tの弁護士は先週25ページの文書を裁判所に提出した。同社はこのうち3ページにわたる箇所を太い黒線で塗りつぶし、読めないようにしたつもりでい(PDFファイル)た。
ところが、Apple ComputerのMac OS Xの「Preview」や、X Window Systemで使用されている「Xpdf」ユーティリティといった一部のPDF読み取りソフトを使えば、この黒塗り箇所をコピー&ペーストできる。
黒塗り箇所には、AT&Tがサンフランシスコ中心街の交換センターにインターネットと電話のトラフィックを監視するための秘密部屋を設置していると言われる理由が懇切丁寧に書かれている。2006年1月にこの集団訴訟を起こした電子フロンティア財団(EFF)は、この部屋が国家安全保障局(NSA)による違法な監視プログラムのために利用されていたと主張している。
黒塗りのページには「原告側が主張する内容はありとあらゆる合法的インターネット監視システムにあてはまるもので、ウイルス検知やハッカー阻止に使われるシステムもこれに含まれると、AT&Tは述べている」とも書かれていた。
また別の箇所には「原告はこの装置を『Surveillance Configuration(監視装置)』として悪いもののように表現しているが、これと全く同じ装置が外国諜報活動偵察法(Foreign Intelligence Surveillance Act:FISA)に完全にのっとる形で監視目的だけのために使われることがある」と書いている。
AT&Tが裁判所に提出した文書の編集箇所は機密扱いに相当するものではなく、NSA監視プログラムの具体的な活動に関する情報は何も公開されなかった。また、Pillsbury Winthrop Shaw PittmanとSidley AustinのAT&T担当弁護士は、そのような秘密部屋の事実上の存在を明確に認めないよう文面の中で注意を払っていた。
AT&T広報担当者からはすぐにコメントを得ることができなかった。
EFFによる訴訟は、秘密部屋の存在が語られるようになる前に提起されたものだ。しかしEFFは、この部屋の存在が表面化したことを受けて、これをAT&Tが自社ネットワークをNSAに公開したと証明するための論拠とするようになった。元AT&T従業員のMark Klein氏は、AT&Tが光ファイバーケーブルを用意し、611 Folsom Streetにある建物の「641A」という部屋に複数の回線を敷設したとする文書を発表した。
PDFファイルから、厄介または秘匿性の高い情報が漏洩したのは、今回が初めてではない。皮肉なことに、NSAは2006年1月、編集作業を安全に行う方法を説明する13ページの文書を発行していた。
似たような問題が「Microsoft Office」ファイルに関するメタデータで発生したこともある。2004年3月、SCO Groupは、Linuxユーザーを相手取る法的措置で狙いをつけていた会社名を誤って公開してしまっていた。そこで「Microsoft Office 2003」と「Microsoft Office XP」では、「Word」「Excel」「PowerPoint」から「隠しデータとグループ作業データを完全に削除する」方法まで提供している。
EFFの裁判所への提出文書には、Klein氏が先週公開した文書を編集したものが含まれていたが(PDFファイル)、こちらは正しく編集されていた。元の文書を残し黒い線を被せる代わりに、EFFはこれらのページをイメージファイルとして保存していた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス