がんを克服したプログラマーが捧げる、ソフトウェア開発者のための手引書

文:Michelle Meyers(CNET News.com) 翻訳校正:尾本香里(編集部)2006年05月22日 16時58分

 癌(がん)を話題にしたがる者はいない。少なくとも一般的にはそう思われている。

 しかし、ソフトウェア開発者のDouglas Reilly氏は、がんに対して、よりオープンなアプローチを取るよう勧めている。同氏は、1人の人間が会社の成功の鍵を握る場合があるソフトウェア開発業界において、自分ががんを克服したことを公表した経験をもつ。同氏のオープンなアプローチは、そんな同氏自身の体験がヒントになっている。

 Reilly氏は、「誰でも緊急時に備えて何らかの対策を立てておく必要がある」と述べ、自分が仕事を休んでいる間、代わりに仕事をしてくれる人がソースコードを利用できるようにしておくことの必要性を強調した。

 ニュージャージー州ブリック在住のReilly氏は、小規模のソフトウェア開発会社Access Microsystemsを経営している。同氏は、あらゆる種類のがんに対する遺伝的素因を持っているという。同氏はすでに50歳の時に肝臓がんを克服し、現在は結腸がんの一種で、治療が難しいとされる粘液腺がんと闘っている。Reilly氏の父と兄は、ともに48歳の時にがんで亡くなっているが、同氏はすでにその年齢を過ぎている。同氏の父と兄は、持病について雇用主はもちろんのこと、外部の人にはほとんど話さなかった。

 2人の子供の父親であり、治療可能ながんと(現時点では)治療の難しいとされるがんの両方を経験したReilly氏は、ハイテク業界の同業者たちに自分の知識を公表する義務があると感じた。そこで同氏は、2006年の早い時期にRed Gate SoftwareのサイトであるSimple Talkに「Coming out as a Cancer Survivor: A Guide for Software Developers(がん克服者の告白:ソフトウェア開発者のための手引書)」というタイトルの記事を投稿した。

 Reilly氏の記事は、投稿後すぐに反響を呼び、さらに人気のハイテクニュースフォーラムSlashdotに掲載されたことで、その勢いはさらに増した。Reilly氏は、すでに治癒したがんから治療可能ながん、さらに治療不可能ながんに至るまで、様々ながんについて平易な言葉で説明している。また同氏は、医療の進歩のおかげでがんの生存率は上昇していると指摘し、読者に感動を与えるがん闘病記を複数挙げている。その中には、プロの自転車競技者Lance Armstrong氏の闘病記も含まれている(Reilly氏自身も自転車愛好家である)。

 Reilly氏によると、Simple Talkに掲載されている同氏の記事のページビュー数(ページが表示された回数)は5万回を超えているという。またReilly氏は、その記事の中で、自分ががんであることを職場の同僚に打ち明ける際のコツとして、ごく一般的な言葉で知らせ、1度知らせたらその後はその話題を何度も持ち出さないようアドバイスしている。

 「『がん闘病者』というイメージで見られたくなければ、同僚の前でがん治療の状況を話題にしてはいけない」とReillyは述べている。同氏は、ASP.netやモバイル開発を専門としており、プログラミングに関する数冊の著作がある。

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