Joe Straitiffの目には、ビデオゲーム大手のElectronic Arts(本社:カリフォルニア州レッドウッドシティー)が従業員にオフィスに缶詰になることを期待していたのは明白だった。
Straitiffの上司は、「年中無休」と書かれたネオンサインを壁に掛け、「休日出勤を要求するメールを部下全員に定期的に送信していた」と語る同氏は、ソフトウェア開発者として約1年半EAで働いていたが、数週間前に解雇されてしまった。解雇理由の1つは、数カ月間連続で週80時間勤務することを拒否したためだという。
「これほど長時間働いたら正気ではいられない。とにかく、あまりにも過酷だった」(Straitiff)
ソフトウェア開発の世界における残酷な長時間労働は、今に始まったことではない。プログラマーは過酷なスケジュールに慣れており、過労はこの職業につきものだ。ゲーム業界でも、商用ソフトウェア業界でも、あるいは企業のIT部門でも、新バージョンを出す際には、ほとんどあるいは全く休みもとらずにプログラミング作業を延々と続けることが多い。
だが、EAや他のゲーム開発会社で働く従業員らがいま本音を語り始めている。彼らは、ゲーム業界が基本的に妥当な労働時間の一線を越えているとし、方針転換を申し入れている。
EAは週80時間以上の労働を社員に毎回のように強制しているとして、多数の元社員らが同社を非難している。世界最大のゲームソフト会社の1つである同社は、前年度に30億ドルの売上を計上しているが、その同社が先ごろ残業代未払いを理由に従業員のグループから訴えられた。
EAはこの訴訟に関するコメントを控えるとともに、現社員および元社員の具体的な申し立てに関してもコメントしなかった。
同社はCNET News.comに宛てた声明のなかで、「ゲームソフト業界各社でみられる問題でも、業界最大手のEAには大きな注目が集まる。この業界で働いていれば、ゲーム開発の最終段階で生じる厳しい労働が、決してEA固有の問題でないことはだれでも分かっている。EAは今後も顧客と社員の両方との関わりを大切にし、EAの素晴らしい職場を確実に維持すべく全力を尽くしていく」と述べた。
EAの労働慣行に対する批判は、先ごろ登場したブログの書き込みに端を発している。このブログには同社に対する同様の批判が書かれていたが、これがきっかけとなって、EAとゲーム業界全体に対する不満が爆発した。これらのコメントは、仕事と家庭のバランスなどほとんどお構いなしに、週60時間以上の労働を社員に要求する業界の姿を描き出している。
労働条件の厳しさを非難されたゲーム開発会社はEAだけではない。たとえば、Atari傘下のある開発会社に勤務する開発者などは、同社が社員に対して週50時間以上の労働を数カ月連続で要求している、とメールに記している。匿名希望のこの開発者は、「いったんプロジェクトが始まると、そのゲームが出荷されるまで息つく暇もなくなる。長いときはそれが2年も続く。労働時間も、週50時間から始まり、60、70、80時間と伸びていく。生活や家族のことは考慮されない」と述べている。
これらの主張に関して、Atariの関係者はコメントを控えている。
権利擁護団体のInternational Game Developers Association(IGDA)でプログラムディレクターを務めるJason Della Roccaは、おもしろいゲームの開発に重きを置くこの業界には、従業員が疲れ果ててストレスに打ちのめされているという、あまり愉快でない別の面もあると語る。
同氏は、EAについて、一部には極端な労働時間を強いられない事業部もあると述べた。しかし、同社は財務面の必要から過度の長時間労働を求めており、また業界全体の労働条件も開発プロジェクトの複雑化に伴って、悪化しているようだと同氏はいう。「ゲームソフト業界は時限爆弾を抱えている。労使関連でいつ紛争が起こっても不思議はない。」(Della Rocca)
ただし、10万ドル以上のサラリーをもらう場合もあるゲーム開発者には、同情の声ばかり集まるわけでもない。先のブログの書き込みに対して、「McDonaldや工場で一度働いて、それからエアコンもあればコーヒーも飲み放題の自分の職場と比べてみろ」という書き込みもあった。
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