「連結営業損益の月次黒字化を今年度内に達成する」---ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は5月10日、2003年度連結決算の発表の場においてこのように述べ、長らく待たれてきた黒字化の目標時期を初めて明らかにした。同社は1月に発覚した顧客情報の漏えい問題によって契約者の純増数が伸び悩んでいるが、「(自粛していた販売促進活動を再開することから)6月以降は以前の調子に戻るだろう」(孫氏)と自信を見せている。
ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏 |
ソフトバンクが同日発表した2003年度連結決算は売上高が前年比27.2%増の5173億9300万円となったほか、営業損失は同371億400万円改善し548億9300万円の赤字、経常損失は同379億700万円改善し719億100万円の赤字となった。ただし最終損失は顧客情報漏えい問題の対策費用などが響き、同71億500万円悪化して1070億9400万円の赤字となっている。
事業別の業績を見ると、従来の稼ぎ頭であったイーコマース事業はコンシューマー向けのソフトウェアの平均単価が下落したことなどから、売上高が前年比4%減の2548億8800万円となった。ただし販管費の削減などで営業利益は同48%増の36億4700万円となった。
インターネット・カルチャー事業はヤフーの広告事業などが好調で、売上高が前年比68%増の640億5400万円、営業利益は同93%増の325億8200万円と順調に推移している。
顧客情報漏えいの影響は200億円規模
ADSL接続サービスのYahoo! BBを扱うブロードバンドインフラ事業は売上高が前年比222%増の1289億600万円と大幅に成長した。しかし顧客獲得関連費用の負担が依然として重く、営業損失は同86億700万円の改善にとどまり、875億9700万円の赤字となった。
Yahoo! BBの一顧客当たり平均収入(ARPU)は2003年度第4四半期で4000円強といい、粗利益に当たる変動利益は課金者1人あたり2350円になった。これは45Mbpsのプランなど利益率の高い契約者数が増加しているためだ。
顧客情報漏えい問題の影響としては、対策費用として31億7600万円の特別損失を計上した。解約率も2004年3月が1.89%、4月が1.57%となっており、前年に比べてわずかながら上昇している。また、今後の情報漏えいを防ぐために新規顧客契約時の内部プロセスを増やしたことから顧客獲得効率が下がっているといい、「営業コストを考えると100億円から200億円ほどの影響があった」(孫氏)としている。
Yahoo! BBを運営するソフトバンクBBでは、今後の戦略として更なる事業規模拡大のために正社員の比率を増やす方針だ。現在パートタイムで雇っているコールセンターの人員などを正社員に変更する。2005年度に新卒を3000名、中途を1500名採用する方針。これによりソフトバンクBBの人員が全体で1000名ほど増えることになるが、「単価はパートタイマーよりも新卒のほうが安く、コストは変わらない。しかし正社員のほうが(会社に対する)ロイヤリティが高く、生産性や顧客満足度が上がる」と孫氏は説明する。「(Yahoo! BBの)ビジネスモデルに確証が持てた。これからは効率を上げるように駒を進めていく」(同氏)
一部報道ではソフトバンクBBが今夏にも個人向け光ファイバー(FTTH)事業に参入するとされている。この点について孫氏は、「いつ、いくらで、どれだけのボリュームで行うと言ったことはまだ言えない。ユーザーから見てFTTHがADSLよりもコスト効率が良いと判断すれば参入する」として、多くを明らかにしなかった。
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