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Winny裁判、罰金刑は重いか?軽いか?--自己矛盾を抱えた判決 - (page 2)
「最近私の方ではコンテンツ流通側とは逆側のコンテンツ提供者側に関するシステムについて考えてることが多いです。そもそも私がファイル共有ソフトに興味を持ったのは、当時ファイル共有ソフト使用ユーザーから逮捕者が出たということ(これは明らかに変だと思った)というのもありましたが、どうやったらコンテンツ作成側にちゃんとお金が集まるのか?ということに、もともと興味があったからです。インターネットの一般への普及の結果、従来のパッケージベースのデジタルコンテンツビジネスモデルはすでに時代遅れであって、インターネットそのものを使用禁止にでもしない限りユーザー間の自由な情報のやりとりを保護する技術の方が最終的に勝利してしまうだろうと前々から思ってました。そしてFreenetを知って、もはやこの流れは止められないだろうと」
そしてその具体的解決方法のひとつとして、金子被告は「デジタル証券によるコンテンツ流通システム」を提案していた。それは次のような内容だ。
――コンテンツ提供者はデジタル証券サーバからデジタル証券のIDを発行してもらう。コンテンツは利用者が自由にコピーしたり配布したりできるが、その際には必ずコンテンツのデジタル証券IDを表示する。そして素晴らしいコンテンツの作成者に対して支援・投資したり、コンテンツに対して何らかの影響力を及ぼしたいと考えたら、そのデジタル証券を購入して投資することもできる。ユーザーの間で、デジタル証券を売買することもできる。この仕組みによって、クリエーターの側は利益を確保できるし、ユーザーの側はたとえば無名のコンテンツに初期投資して、メジャーになったら証券市場で売却して利益を上げるといったことも可能になる。
果たしてこの証券システムがうまく稼働するのかどうかはわからないが、しかし金子被告が真面目に著作権システムの今後を考えていたのは間違いなかったように思われる。そしてその将来を実現するためには、ボロボロになっている現行の著作権システムが崩壊しなければならず、そこでWinnyを配布して――と考えたのだった。
そして氷室裁判長はこの金子被告の思考経路に、明らかに一定の理解を示したのである。
論告求刑時の記事に書いたように、金子被告のそうした考え方は、現在の著作権法の理念とは著しくかけ離れている。その考え方がいかに倫理的には正しいものだったとしても、現行の著作権法、現行の著作権保護システムを崩壊させようとするのであれば、その行為は法違反とならざるを得ない。つまりは金子被告は字義通りの確信犯だったわけだ。
その意味で、金子被告が無罪となる道はこの時点ですでに存在していなかったように思われる。みずからの思想に殉じるのであれば、最後までみずからを負わなければならない。いや、そんな倫理性の話でなくても、あちこちで「著作権を崩壊させる」と発言して国家権力に挑戦し、結果的に著作権侵害ファイルを蔓延させている以上、これを無罪とするというのは国家権力の側の判断としてはあり得ないように思われる。
しかし一方で、裁判長にも突き詰められた問いかけがあった。金子被告のような確信犯をどう裁くのか――単純に外形的事実だけを見て「それは法違反だ」と判断するのか。それともその思想の方向に一定の理解を示すのか。さらにいえば、ソフトウェア開発者を刑に処するという司法的踏み込みを簡単に行ってしまっても良いのか。さまざまな難問がそこには横たわっており、単純に金子被告を断罪すれば済むというものではなかったわけで、そうした難問のバランスを取った結果が、今回の「罰金一五〇万円」という不思議に軽い判決だったのではないかと思うのである。
この判決には、大いなる自己矛盾もある。氷室裁判長は、情状酌量の理由として「著作権侵害を目的にしたのではなく、新しいビジネスモデルを生み出すためだった」と述べた。しかし金子被告の意図が著作権侵害ではなかったのだとしたら、その行為がなぜ「著作権侵害の幇助」に問われなければならなかったのか? 意図はしていないが、結果的に侵害に利用されれば、それは「幇助」となってしまうのか? このあたりの問題は堂々めぐりの迷宮に入ってしまいそうになる気もするが、こうした自己矛盾がひそかに内在しているあたりにも、今回の判決の何とも言えない微妙さが浮き彫りになっているようであり、そしてこの事件の判断の難しさを体現しているようにも思えるのである。
最後に自己宣伝になってしまって恐縮なのだが、私はこの裁判のほとんどを傍聴してきた(判決公判のこの日も京都地裁の駐車場に並び、抽選の結果、運良く傍聴券を手にすることができた)。そしてこの裁判の傍聴メモをもとに、Winny事件が社会に突きつけている問題を、12月18日に発売される「ネットv.s.リアルの衝突―誰がウェブ2.0を制するか」(文春新書)という書籍で追い求めてみた。もし機会があれば、書店で手にとって見ていただければと思う。
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