キャリア各社が語る、「ケータイの向かう先」 - (page 2)

誰が「トータルコーディネーション」をするのか

 2番目のテーマは「ケータイはどこへ向かうのか」。ACCESS代表取締役社長 兼 共同最高経営責任者の鎌田富久氏は、これまでの10年はモバイルとインターネットの融合にあったとし、今後はネットワークの高速化によってクラウドコンピューティングとの融合が始まるとした。その上で、クラウドコンピューティングに対するモバイルならではの機能が必要になっていくと述べた。

ACCESS代表取締役社長 兼 共同最高経営責任者の鎌田富久氏 ACCESS代表取締役社長 兼 共同最高経営責任者の鎌田富久氏

 またKDDI高橋氏はこれからの10年について、機能重視の考えから、顧客視点でそれぞれの趣味、嗜好やセンスに合った商品を作り、トータルコーディネートされた商品が求められる時代に変わると予測。これまでは携帯電話キャリアがコーディネートを一手に担ってきたが、iPhoneのように新しいプレーヤーが増え、提供側が多様化してきていると説明した。それゆえ、今後は誰がコーディネートをするのかという点が、競争上重要になるとしている。

 ソフトバンクモバイル吉田氏は、これからの携帯電話のあり方は2つあると話す。1つはハード面での進化で、モバイルにおいてはムーアの法則がまだ有効であるとし、10年後にはより高速なCPUを搭載した携帯電話が登場する可能性があるとした。もう1つはアプリケーションとコンテンツの発展だ。“ガラパゴス”と呼ばれる日本の携帯電話市場を、鎖国の江戸時代に例え、江戸時代に日本のカルチャーが大きく進化して現在でも海外から高い評価を受けているように、携帯電話においても優秀なクリエイターやアプリケーション開発者、そして携帯電話キャリアが一体となって再び革命を起こすと予測した。

ウィルコム執行役員副社長の近義起氏 ウィルコム執行役員副社長の近義起氏

 一方、ウィルコムの近氏は、3Gやスマートフォンが日本に入り込んだことでガラパゴス化が崩れていると指摘。その上で、世界的に大きなシェアを持つ海外企業がそれぞれ事業ドメインを端末、インフラなど特化させていることを挙げ、日本企業も今後グローバル競争にさらされる中で、端末、インフラ、サービスなどの分野を分離して取り組む必要が出てくる可能性を示唆した。ただ、日本は海外の小国と異なり、日本語でないとサービスが受け入れられないことなどから、「攻め込まれるという観点では、かなり絶壁の孤島としてガラパゴスが維持できる」と、国内ローカルであるインフラ事業の優位性についても評価を示している。

市場拡大の取り組みが不可欠

 3番目のテーマは「脱電話としてのケータイのあり方」「グローバル競争にどう取り組むか」。 NTTドコモの永田氏は、日本の携帯電話は進化が速く、海外と異なる進化をしたためガラパゴスと呼ばれるようになったが、標準技術を採用するなど概念自体はグローバルなものと説明する。今後の携帯電話キャリアの役割としては、先にKDDI高橋氏が触れた「コーディネート」の重要性を挙げ、ユーザーが求める価値をデザインして提供できるプレーヤーが勝つとした。

 また携帯電話キャリアがビジネスをしていく上では、端末やソフトウェア、コンテンツなどを提供するパートナーが重要との認識を示した。パートナー企業を失わないためにも、出資している海外企業などと連携して彼らが世界に進出できる環境を作ったり、携帯電話以外の機器などに取り組んだりすることで国内の市場を拡大する取り組みが欠かせないと話している。

 最後に、業界団体Open Mobile Terminal Platform(OMTP )の「BONDI」や、ソフトバンクらが設立したジョイント・イノベーション・ラボ(JIL)が提唱するモバイルウィジェットなど、携帯電話の業界団体が提唱するアプリケーションの共通プラットフォームについて議論がなされた。これらの取り組みについて、「携帯電話キャリア各社が競争を焦った結果、技術がバラバラになってしまった」(KDDI高橋氏)、「日本の携帯電話キャリアが複数のエコシステムを維持することはできない。1つにしていくべき」(NTTドコモ永田氏)と、環境を統一化すべきとの声が上がった。ただし、どのプラットフォームを支持するかなどについては、今後の情勢を見極めたいと慎重な様子であった。

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