スパイシーソフトの「アプリ★ゲット」は、個人作成のモバイルアプリを配信するサイトの老舗だ。現在では、そうした中から「糸通し」「チャリ走」などのヒットアプリが生まれ、年収1000万円を超えるクリエイターも誕生している。
2008年には、漫画を対象とした「マンガ★ゲット」をスタートさせて事業を拡大するとともに、個人の創作活動支援の幅を広げている。同社が携帯電話を活用して個人の創作活動を支える理由と、そのビジネスモデルについて、代表取締役社長の山田元康氏に話を聞いた。
当社は「アプリ★ゲット」「マンガ★ゲット」というサービスを展開しています。これらはゲームや漫画などのクリエイティブな活動をする個人に対し、作品を投稿する場を提供します。当社が審査した上でユーザーに公開するというアグリゲーター型のサービスになります。
また、公式有料サイトの「アプリ★ゲットDX」というサービスも展開しており、こちらでは人気アプリクリエイターの続編などを月額210円で提供しています。アプリ★ゲットDXが従来のゲームサイトと大きく異なる点は、家庭用ゲーム機などで展開された人気ゲームを移植したり、その続編を作ったりするというのではなく、無料ゲームサイトで培ったゲームやクリエイターのファンを、公式サイトに連れてくるという点です。
個人クリエイターの作品の場合、誰が作ったか分からない作品を置いていても有料販売は難しい。しかし、あらかじめ無料のアプリ★ゲットでファンを作ることで、そのファンを有料コンテンツへと確実に誘導できるわけです。
実は、会社を設立してから1年はPC向けソフトを開発していたものの全く売れず、事業の見直しをした時期に、ちょうどiモードの登場などでモバイルインターネットが注目を集めていました。当時のモバイルコンテンツは、人気があるとはいえ待ち受けや着メロなど、PCと比べると貧弱な印象があったので、最初は抵抗を感じていました。ですがiアプリが誕生し、携帯電話でもアプリケーションが利用できるようになったことから、ソフトウェアのノウハウが生かせるのではないかと思ってモバイルコンテンツの市場へ参入することを決めました。
最初は公式サイトでのビジネスを考えていたのですが、当時は通信キャリアへの公式サイト申請数が多くなかなか提案が通りませんでした。そこでiアプリが利用できる端末が発売されるのを機に「アプリ★ゲット」を立ち上げ、一般サイトでビジネスをすることにしたのです。
とはいえ最初の2年間は、ページビュー(PV)こそ伸びていたものの、収益にはつながりませんでした。というのも、当時はサイトの広告を代理店経由で販売していたため、出会い系や消費者金融などの広告が大半を占めるという状況でした。広告で誘導した先にそのようなサイトがあることで、ユーザーの信頼やサイトの品位が低下するなど、悪い影響がもたらされてしまっていたのです。そこで、自社で広告枠を直接販売し、広告をモバイルゲームに絞って掲載する方針に変更したところ、PVと売り上げが直結するようになりました。
ただ2007年頃になると、無料で遊べるゲームサイトの台頭でユーザーがそちらに流れ、PV数の伸びにも限界が出始めました。加えて広告の単価も下落したことから、従来のビジネスモデルに限界を感じるようになったのです。ちょうどモバイル広告の市場も改善されてきたことから広告枠の直販を止め、代わりに公式サイトでの有料ゲーム配信に入れることにしました。ユーザーがアプリのファンとなって無料サイトと有料サイトの間を循環し、それによってプラットフォーム自体が大きくなるという、現在のスタイルを作り上げるに至ったのです。
クリエイターが得る収入手段はいくつかあります。1つは、当社がクリエイターに提供しているアフィリエイトシステムによる収入。2つめは、公式サイトでのアプリダウンロード数に応じたライセンス収入です。アプリ★ゲットDXでは従量制と月額課金制の双方を採用しており、前者はアプリの販売数、後者は初期ライセンス費用と毎月のダウンロード数に応じた料金が支払われます。マンガ★ゲットではさらに、サイト全体の広告収入をクリエイターに分配するという仕組みも用意しており、これはアプリ★ゲットにも導入する予定です。
もう1つが「専属作家制」です。これは、クリエイターと専属契約を結ぶことで一定額の支払いを保証するというものです。通常のクリエイターに対しては、アプリの提供本数に応じた金額を支払いますが、ヒット作を持つクリエイターには「スーパー専属契約」と呼ぶ形態の契約を結んでいます。これは、新たにアプリを制作せず、すでにある作品を当社限定で配信するだけでもよい、という契約です。
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