モバイルサイトの主な利用者は10代を中心とした若者だ。上の年代と比べ、よりクリエイティブな仕事にあこがれを持ったり、実際に何らかの活動をしたりするという傾向が強い。最近ではそうした活動の中から実際に収入を得て、プロとして活動するケースも見られるようになってきている。「恋空」などで話題になったケータイ小説はその代表例といえるが、他にもさまざまなジャンルで、ケータイの中からプロのクリエイターが生まれてきている。
今回はそうした中から、携帯電話アプリで年収1000万円を稼ぐクリエイターの事例を紹介する。彼への取材を通して、携帯電話で収益を得る手段や、プロとなるのに必要な要素などを考察する。
携帯電話アプリのプロクリエイターとして大きな収入を得ているのは、「護美童子」の名前でアプリを開発し、公開している星野裕太氏。そして、その収入を得る大きな原動力となっているのが、星野氏が開発した「チャリ走」というゲームアプリだ。
チャリ走をご存じのない方のために、その内容を説明しておこう。これは自転車に乗ったキャラクターを操作し、穴に落ちたり障害物に当たったりしないようにジャンプしながら進んでいくという、強制横スクロール型のアクションゲームである。途中ライバルが登場するなどの展開はあるものの、基本的には障害物を避けて進むだけ、落ちたらゲームオーバーという、極めてシンプルなゲームだ。
キャラクターや背景はほぼ白黒で、高機能化が進む携帯電話ゲームのトレンドとは逆行しているように見える。だがそのシンプルさとテンポのよさが、ゲームオーバーになってもついつい何度もチャレンジしてしまう中毒性を生み出している。2006年に無料公開されてから現在に至るまで、累計ダウンロード回数は1000万回を超え、高い人気を維持しているのだ。
そのチャリ走を開発した星野氏は、現在22歳。ゲーム作りに取り組んだのは、高校3年生の頃だという。当初はWindows用のゲームを開発しようと志したものの、「勉強してみた結果、これは難しいと思って中断した」(星野氏)。だがそれでもゲームを作りたいという思いは消えず、他にゲームを作る方法はないかと調べていたところ、普段遊んでいた携帯電話向けのゲームアプリが、自分でも開発できることを知ったという。
携帯電話アプリは環境がシンプルで、C++などと比べて複雑な要素が少ないJavaで開発できることもあって、Windowsよりハードルが低い。これなら自分でもできるのではないかと参考書を片手に、独学で携帯電話ゲーム作りを始めたのだそうだ。
こうして星野氏は携帯電話ゲームの開発に熱中。最初に「ぱ!ねる」というパズルゲームを制作して以降、いくつかのゲームアプリを開発した。ただ当初は自身のサイトでアプリを公開するのみであり、利用する人も限られていた。そこで、携帯電話アプリが登録できるいくつかのアプリポータルサイトに登録するようになった。そうしたサイトの1つにスパイシーソフトの無料アプリポータル「アプリ★ゲット」があり、ここへの登録が、彼のその後を大きく変えることになる。
その後も星野氏はゲームアプリの開発を続け、鉄球を避け続けるアクションゲーム「ESCAPE!」などは口コミや掲示板サイトなどで話題にもなった。
そして2006年に「チャリ走」を発表。当初は任天堂の「スーパーマリオブラザーズ」のようなゲームを作っていたのだが、面白くするためスクロールを強制にしてみたり、主人公を身近な移動手段である自転車に乗せたり……と試行錯誤していった結果、現在のチャリ走の形が生まれたのだという。
チャリ走は公開から程なくして、掲示板サイトや口コミなどでたちまち評判となり、アプリ★ゲットのランキングでも上位に入るようになった。そこでスパイシーソフト側から声がかかるようになり、当時同社が発行していた雑誌に毎号取り上げられた。さらには「チャリ走全国一周」「チャリ走世界一周」など、スパイシーソフトの雑誌や有料コンテンツとのコラボレーションによる作品が提供されるようになったことで、大ブレイクを果たしたのだそうだ。
しかし、いくら人気のあるアプリだからといって、単に雑誌に取り上げられたりするだけで収入が得られる訳ではない。では、彼はどうやって収入を得ているのだろうか。
主な収入源は、大きく分けて3つある。1つは、自身のサイトにアフィリエイト広告を掲載することで得られる収入である。これはモバイルの一般サイトにおいて最もよく採用されている収益手段だが、スパイシーソフトは独自のクリエイター向けアフィリエイトシステムを、アプリ★ゲット登録者に提供している。このシステムではゲーム関連の広告など開発者のサイトに適した広告のみが提供されており、出会い系やアダルトなど健全性の低い広告は配信されない。そのため、クリエイターが自分のサイトに合った、健全な広告を掲載できるという。
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