前回に引き続きモバイルコンテンツの市場動向について紹介していこう。 今回は、電子書籍やデコメールをはじめとした、近年急成長を遂げたジャンルのコンテンツの動向を解説する。
近年急成長したジャンルの1つとして挙げられるのが、電子書籍である。モバイル・コンテンツ・フォーラムが2007年7月24日に発表した資料によると、携帯電話向けの電子書籍市場は2006年時点で約69億円に達している。NTTドコモに限って言えば、2007年8月単月で11億円の規模になっているという。今や主要なコンテンツジャンルの1つとなっているといえよう。
伸びの大きさの要因となっているのが、他のジャンルと比べ顧客単価が高いということだ。電子書籍のコンテンツは月額課金で金額に応じたポイントを毎月発行し、利用者はそのポイントを消費して書籍を購入するという形式が一般的だが、さらに都度課金でポイントをプラスできるようにもなっている。電子書籍をたくさん読みたい人がどんどんポイントを購入するため、結果として1人あたりの利用料金が多くなっているのだ。
この手法は着うたなどのサイトでも採用されているが、着うたの場合、目的の曲を1曲ダウンロードするとユーザーの行動はほぼ完結する。これに対して、電子書籍では、1つのストーリーを1話、2話、3話……と話数で区切って提供しており、作品を読み進めるにはポイントを消費して1話ずつダウンロードする必要がある。
多くの電子書籍サイトは、第1話の一部、もしくは全部を無料で提供して最初のハードルを下げつつ、ダウンロードページでは次の話のページへリンクを張ることで、ユーザーがスムーズにダウンロードできるような導線を作っているのだ。
さらに最近では、複数話をまとめて提供するパック販売や、お勧めのコンテンツを紹介するリコメンド機能を用意するサイトも増えている。ユーザーに作品の続きや、他の色々な作品を読ませる仕掛けができているようだ。
ジャンルとしては、携帯電話の秘匿性の高さから、大人向けのコミックが支持を集めている。例えば、女性向けのBL(ボーイズラブ)、TL(ティーンズラブ)と呼ばれるジャンルなどは非常に大きな勢力となっている。
もっとも、電子書籍の市場をより広げていくためには、ジャンル面での幅の広がりが求められるところでもある。過去にはドラマの原作となったコミックが電子書籍でも人気を博している。出版社の版権や料金の問題などはあるものの、それらをクリアすることでさらに市場を拡大できるだろう。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス