情報通信政策について議論と提言を行う民間団体、情報通信政策フォーラム(ICPF)主催のシンポジウム「2.5GHz帯をどうする」が12月4日、開催された。ソフトバンクモバイル取締役副社長の松本徹三氏による基調講演に続き、同氏、および情報通信分野の有識者として慶應義塾大学准教授の金正勲氏、上武大学教授の池田信夫氏、東洋大学教授の松原聡氏、東洋大学教授の山田肇氏によるパネルディスカッションが行われた。
パネルディスカッションの第1のテーマとなったのは「公明正大な比較評価は可能か」という点。登壇者の共通した見解は、公正な評価基準を設定し、総務省がそれを国民に公表する義務があるという点だ。しかし、「政府に基準を設定する能力があるのか」(金氏)、「民間と官で技術知識のレベル差があることは明白。知識レベルが低い人が高い人を評価するのはおかしいのではないか」(池田氏)といった、評価する政府の側の能力を問う声が次々に挙がった。
一方、審査される側のソフトバンクの松本氏からは「総務省にとっても審査は酷な話だ。民間がもっと知恵を絞って考えるべき。WiMAXのインフラは事業者同士が協力して敷設し、ビジネスモデルやサービス展開で各社が競争をすればいい」と意見を述べ、政府主導による一本化というこれまでの周波数配分の方針にこだわらず、各社が協調した新たなやり方を模索すべきだという考えを改めて主張した。
また、第2の論点として取り上げられた「オークションは比較評価の代替となるか」というテーマでは、反対派と推進派でパネリストの意見が分かれた。オークションのメリットは、恣意性が入らないので公正さが保たれる点と、新規参入が可能になる点、というところで登壇者の見解は一致しているが、「金がすべてというやり方では、ユーザーにメリットがない」(松原氏)、「財務的な競争になってしまう」(金氏)、「落札企業がオークションで資金を使い果たし、サービスを展開できなくなってしまった例もある」(山田氏)という反対派の意見が出た。これに対し、池田氏は「サービス価格というのは市場が決めるもの。損する業者が出るというのはその業者の思慮が甘かったというだけで、これを問題だとするのは市場理論を否定するものだ」と反発した。
2.5GHz帯の認定事業者2社は12月12日にも決定すると言われている。これについて「第3.9世代、第4世代と既に新たな動きも見られる無線周波数が今後どうなっていくかは今の段階ではまったく見えてこない。1.7GHz、2GHzでの失敗の例も踏まえて技術の中立性という視点からもっと慎重に検討すべき」(松原氏)、「周波数の配分は柔軟性が問題になる。市場の変化に合わせて対応できるよう使用用途の変更を認めるべき」(金氏)、「周波数配分が過去からのしがらみに囚われすぎている。例えば、多くの周波数が割り当てられている地域防災無線は、今は通信事業者の技術でも十分カバーできるはず。これまで局所的な議論しかしてこなかった結果、動きが取れなくなってしまった」(山田氏)、「WiMAX自体がどうなるかわからない」(池田氏)など、今すぐに結論を出すのは時期尚早とする意見が目立った。
ただ、「公正に評価できるシステムをつくっていくほうが将来にも効果的」(松原氏)、「比較審査はこれからも毎年続くこと。今回をきっかけに周波数のあり方に対する議論がスタートするだろう」(山田氏)と、2.5GHz帯をめぐる議論自体には意義があるという意見も出されていた。
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