携帯電話最大手のNokia(フィンランド)がじわじわと、だが確実に動いている。8月末、Nokiaはインターネットポータルサービス「Ovi」を発表、その前に静かにベータローンチしたコンテンツ共有サービス「MOSH」など、モバイル向けサービス分野を強化している。
Oviは、音楽、地図、ゲーム、インターネットなどで構成されるポータルサービス。特に注目されるのが音楽だ。2006年に買収した米Loudeyeの技術をベースとしたもので、ブランド名は「Nokia Music Store」。ここでは、携帯電話で楽曲が購入できるOver the Airを利用できる--米AppleのiPhoneではまだ実現していないサービスだ。価格は1曲1ユーロ(iTunesよりも0.1ユーロ高い)、アルバムは10ユーロから。
Oviは今年第4四半期、まずは欧州市場より提供を開始する。利用には対応端末が必要で、スタート時は「Nokia N95」など一部のハイエンド/音楽端末となる。
一見するとOviは、iPhone/iTunesで欧州市場に進出するAppleに対するNokiaの回答に見える(iPhoneの欧州ローンチも今年第4四半期)。だが、Nokiaの野心はもっと大きいようだ。
Nokiaは今年6月、サービス事業部を立ち上げている。携帯電話メーカーであるNokiaはこれまで、モバイル向けアプリケーションの提供に向け、地図、音楽、SNSなどの分野で企業買収を行いながら、少しずつ持ち駒を増やしてきた。それだけではなく、9月17日にはモバイル広告サービスの米Enpocket買収を発表、今年発表していたモバイル広告サービス「Nokia Ad Service」「Nokia Advertising Connector」と統合していくという。今後、新事業部の下でこれらのサービスビジネスを強化すると予想される。
Ovi以外のコンテンツ分野での取り組みを挙げると、コンテンツ共有サービスMOSH(MObilize and SHare)がある。携帯電話とPCを使って、携帯電話で撮影した動画・写真、ゲーム、クリエイティブなコンテンツなどをメンバーと共有できる。
また、「Nokia Video Center」は2月にYou Tubeなどと提携してスタートした動画アプリケーション。10月2日には、CNNやSony Picturesをコンテンツパートナーに加え、サービスを拡大した。
このように、Nokiaがモバイルインターネット時代に向けて本腰を入れたことは明らかだ。そしてこれは、オペレータにとっては脅威となる。端末メーカーとオペレータはこれまでも微妙な関係にあったが、以前書いたように、オペレータの提供するポータルは必ずしもヒットになっていない。Appleの参入、あの手この手で進出を図る米Googleや米Yahooの動きを受け、Nokiaはとうとう自社で対抗する姿勢を示したといえる。
1865年創業のNokiaは、ゴム長靴からTVまで、時代に合わせてビジネスを変えてきた企業だ。以前、Nokiaの人とインタビューしたとき(題材はNseriesなどのマルチメディアコンピュータだった)、「Nokiaは携帯電話メーカーではなくなるのでは?」と聞くと、「携帯電話にはそれほどこだわっていない」という答えが返ってきたことがある。ひょっとすると、数年後にはインターネットサービス企業として変革を遂げているのかもしれない。
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