日本電信電話公社(現NTT)出身で、現在はイー・アクセス 取締役会長およびイー・モバイル 代表取締役会長 兼 CEOを務める千本倖生氏と、ベンチャー企業の事業失敗後NTTドコモに入社し、現在同社でプロダクト&サービス本部 マルチメディアサービス部長を務める夏野剛氏。一見正反対のような道を歩む2人が、京都で開催された「Red Herring Japan 2007」にて同じ壇上に立った。モデレーターの日本経済新聞 編集委員 関口和一氏を含め、流ちょうな英語を話す3名は、外国人が半数を占める聴衆を前に英語で激しい討論を繰り広げた。
長年NTTに務めていたにもかかわらず、退社後にNTTと国内長距離通信で競合する第二電電(現KDDI)や、インターネット通信サービスで競合するイー・アクセスなどを立ち上げた千本氏は、「価格破壊を起こすため、NTTという独占的企業に対抗する必要があった」と当時を振り返る。
長距離電話料金とインターネット通信の次に千本氏が目をつけたのは携帯電話の料金体系だ。データ通信サービスが普及しているとはいえ、「日本のARPU(Average Revenue Per User、1ユーザーあたりの売上額)は、米国や韓国、英国、台湾などの携帯電話普及国よりずっと高い」と千本氏は指摘、「今度はモバイルブロードバンドサービスで価格破壊を起こす」との意気込みで2005年にイー・モバイルを設立した。
一方の夏野氏は、インターネットが国内で普及する以前の1996年、広告収入をベースにインターネットアクセスをユーザーに対して無料で提供するというビジネスモデルを展開するベンチャー企業、ハイパーネットに参画した。その後ハイパーネットは倒産し、夏野氏は1997年NTTドコモに入社、1998年に開始したiモードサービスの展開において中心的役割を務めた。
「当時の携帯電話は、データ通信にはほとんど利用されていなかった。今ではゲームや音楽ダウンロードなどが可能で、マルチメディア端末として利用されている携帯端末だが、iモードが登場する以前はメールやインターネットさえできなかったのだ」。iモードサービス開始当初を振り返り、夏野氏はこう語る。
その後iモードは爆発的に普及した。現在も携帯電話を使ったサービスは、決済機能が加わるなどさまざまな進化を遂げている。夏野氏は、千本氏が指摘した他国より高い日本のARPUについて「われわれはユーザーに新しい価値を次々と提供している。だからこそARPUが下がらないのだ」と反論した。
とはいえ、ナンバーポータビリティ導入後、ドコモのユーザー純増数は以前ほど勢いがなく、KDDIやソフトバンクモバイルに対してシェアを失いつつあるのも事実だ。モデレーターの関口氏にこの点を指摘された夏野氏は、「シェアを失ってもユーザー数そのものは増えている。ドコモは年間70億ドルもの利益を生み出しており、現在も52%のシェアをキープしている。小さな競合を気にしてはいない」と自信を見せた。
しかし、そこでRed Herring会長のAlex Vieux氏が口をはさんだ。
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