Appleは、ネットワーク製品大手のCisco Systemsが持つ商標の使用許可を得ないまま性急に「iPhone」を発表したことで、Ciscoにきつい一発を見舞うかたちになった。
AppleがiPhoneを発表する以前、Ciscoは同社と相互運用契約を結ぶことを望んでいた。Ciscoの法律顧問Mark Chandler氏は、同社がAppleに対して商標権侵害訴訟を起こした後の米国時間1月10日に取材に答え、経緯を説明した。それによると、サンフランシスコで開催された「Macworld Conference & Expo」で、Appleの最高経営責任者(CEO)のSteve Jobs氏が「iPod」の機能を搭載した待望の携帯電話、iPhoneを発表する前日の1月8日夜の時点では、両社は合意に近づきつつあったという。
しかし、「激しい」議論が8日の午後8時に終わって以来、Appleからの連絡は途絶えたと、Chandler氏は話す。
Ciscoが望んでいた契約条件の1つは、Appleと協力して両社の製品間の相互運用性を確保する、というものだった。交渉の詳細は明かされていないが、Ciscoの関係者は11日、Appleに拒否された相互運用条項とは、CiscoとAppleの製品を網羅する内容だったことを示唆している。
Ciscoの広報担当者John Noh氏は、次のように述べている。「大まかに言えば、当社が求めていたのは、Appleとの協業を通じて当社の製品および技術との相互運用性を高めることだった。今回の件では、相互運用性の確保は重要な検討事項だった。その理由は、これまで表明してきたように、当社は家庭の電話、携帯電話、職場の電話、コンピュータの融合に、果てしない可能性を見いだしているからであり、また、それらを融合した機器で消費者の望むサービスを提供するためには、ネットワークが技術革新の基盤になると考えているからだ」
この件に関し、Appleからはコメントを得られなかった。
この数年で、CiscoはVoIP市場のけん引役となった。当初はもっぱら大企業を対象にVoIP技術を販売していたが、現在は同社のホームネットワーク部門Linksysを通じて、一般家庭にもVoIPの普及を進めている。具体的には、SkypeやYahooなどの企業と提携し、消費者向けのVoIPサービスをワイヤレスおよびコードレス電話と統合する試みがある。
そして、Ciscoが「iPhone」のブランド名を使っているのも、こうした消費者向け製品だ。同社は、先ごろラスベガスで開催されたConsumer Electronics Show(CES)でも、製品の一部を展示していた。たとえば、ストレート型携帯電話のような外観の「WIP320 Wireless G」は、標準仕様の「802.11 b/g」(Wi-Fi)ネットワークを利用してインターネットにアクセスする。音声通話は、SkypeのVoIPクライアントを利用して行う。
一方で、Appleの「iPhone」は、通話にCingular Wirelessの携帯電話ネットワークを使う予定だ。iPhoneはWi-Fi機能も備えているが、Appleでは、この機能はデータやマルチメディアコンテンツを端末にダウンロードするためのものだと明言していると、Appleの動きに詳しいCreative Strategiesの主席アナリスト、Tim Bajarin氏は述べている。この機能により、Wi-Fi接続が利用可能なエリアにいれば、ブロードバンド並みの速度でデータやコンテンツがダウンロードできるという。
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