平成22年2月22日、電通より「2009年日本の広告費」が発表になりました。
推定によると日本の総広告費は、5兆9222億円と6兆円を割り込み、前年比11.5%の減少となったようです。
今回の目玉は何と言っても、ついにインターネット広告費が新聞広告費を上回り、テレビに次ぐ広告媒体になったということではないでしょうか。この事はどの媒体のニュース記事でも見出しとして大きく取り上げていることと思います。
2009年の日本の広告費の特徴は、衛星メディア関連広告費とインターネット広告費以外は軒並み二桁の減少になっていることです(POPは0.8%、DMは5.2%の減少)。アメリカの金融危機に端を発した世界同時不況が背景にあるといわれていますが、それだけではないような気がします。
それにしても、この大きな落ち込みが景気の回復によって果たして復調するのでしょうか。メディアの地殻変動と相まって、影響はそれ相応の期間に及びそうな気がしてなりません。媒体別広告費第2位となったインターネット広告が牽引役になるのでしょうか。
ところで、インターネット広告費の内訳をみると、7069億円のうち、媒体費が5448億円、広告制作費が1621億円となっています。その媒体費の中身は、ディスプレイ広告費が2707億円、残りが検索連動広告費(PC領域のみ)1710億円、そしてモバイル広告費1031億円といった内訳です。
インターネット広告費の中で、もっとも牽引しているのがモバイル広告費であり、広告費全体が低迷する中、12.9%の伸びを示しました。その中でもモバイル検索連動広告は224億円で前年比31.8%の伸びとなっています。
モバイル広告は、ブラウザ機能付携帯電話(9200万契約)に到達できるメディアであり、さらにスマートフォンの飛躍的な普及によって、PCインターネットとの垣根がなくなる時代に突入します。まだまだ小さな割合ですが、モバイル広告費の伸びはようやくモバイルの媒体価値が認知されてきている証ではないでしょうか。
モバイル広告を掲載するモバイルサイトも他のメディア、特にテレビ広告に波及効果をもたらしています。ソーシャルネットワークサービス(SNS)企業のテレビ広告出稿が飛躍的に増加しています。
またモバイルを中心に展開している通販サイトのテレビ広告も増えています。新しいメディアが成長する過程で、最大のプロモーション媒体はテレビ広告ということです。大手検索サイトも年末、年始にテレビ広告を多く出稿していました。
2009年、広告ビジネスは大きな曲がり角に直面したのかもしれません。ただし悲観する曲がり角ではなく、媒体同士のネットワーク化と時間軸、場所との関係性、人の行動過程でのプレイスメント等、今、直面している課題を再構築することで、新しい伝達システムを形成することができる時期に来たといえるかもしれません。
モバイルはそのハブになる可能性があるのではないでしょうか。
◇ライタプロフィール
戸口功一(とぐち こういち)
1992年(株)メディア開発綜研の前身、菊地事務所(メディア開発・綜研)にてスタッフとして参加。2000年法人化で主任研究員、2005年より現職。1992年電通総研「情報メディア白書」の編集に参加。現在も執筆編集に携わる。その他、インプレス「ケータイ白書」、「ネット広告白書」、新映像産業推進センター(現デジタルコンテンツ協会)「新映像産業白書」、「マルチメディア白書」、「デジタルコンテンツ白書」の執筆および経済産業省、総務省の報告書等を多数手掛ける。
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