今年4月、オーバーチュアの検索連動型広告「スポンサードサーチ」が新たなプラットフォーム「新スポンサードサーチ」(開発コード:Panama)に移行した。Panamaがオンライン広告に与えた影響やサーチマーケティングの現状はどのようなものなのか。オーバーチュア マーケティング シニアディレクターの山中理惠氏がシーネットネットワークスジャパン主催のイベント「CNET Japan Innovation Conference 2007」で講演した。
まずスポンサードサーチだが、従来は単純に入札金額によって表示順位が決定されていた。しかし、Panamaでは広告テキストと飛び先ページとの関連性なども順位に影響するようになっている。つまり、ユーザーが求める情報に近い広告ほど、上位に表示されるわけだ。
そのような関連性(レレバンス)の高い広告は低いコストで成果を得られるようになり、クリック率が向上。結果としてスポンサードサーチ全体のコストパフォーマンスも向上したという。
さらに、Panamaによって従来よりもきめ細かな広告商品が実現できるようになった。今後は地域ターゲッティングや行動ターゲッティングを展開するほか、広告出稿の自動化も進めていくとのことである。
また、オーバーチュアでは携帯電話を対象としたスポンサードサーチや、コンテンツ連動型広告「コンテンツマッチ」も手がけているが、最近はこれらの商品の伸びが著しいという。
「パソコンとモバイル、スポンサードサーチとコンテンツマッチという各商品をバランスよく運用する、コンサルティング的なアプローチが重要になってきています」(山中氏)
山中氏は、SEM(Search Engine Marketing)ではなく、「サーチマーケティング」という言葉を使う。この言葉には、検索連動型広告やSEOという以上の意味が込められている。重要なのは、「検索」という行為を、マーケティングプロセスの中に組み込むことなのだという。
例えば、メディアの利用頻度を目的別に調査したデータによれば、商品を購入する際に最も利用されるメディアはインターネットであり、特にパソコンやデジカメなど強い意欲を持って購入される商品ほどネットで情報が検索される。
一方、情報自体はネットで集めても、ネットで購入するとは限らないというデータが出ている。しかし、ネットで情報を調べた客は、リアル店舗でも多くの買い物をすることもわかってきた。
そのため、ネット広告はネット上で完結すればよいということではなく、オフラインにおける効果こそが本命と考えられるようになってきていた。大企業ではクロスメディア広告の展開が進んでいるが、テレビCMのあとに検索キーワードを表示すると、平均で検索件数が2.4倍、日用消費財に至っては約10倍に跳ね上がる傾向があるという(博報堂調べ)。これは、リアル店舗での売上に大きく影響すると推測される。
また、在庫が切れている商品の広告は出さないようにするなど、今後は企業の基幹業務にネットが組み込まれることが重要になるという。
それでは、今後企業はどのようにサーチマーケティングを活用していくべきか?
従来のSEOや検索連動型広告では、ユーザーを検索エンジンからいかにECサイトへ誘導するかを重視してきた。しかし、ユーザーは商品やサービスを買うためだけに検索を行うのではなく、その商品のポジショニングを確認するために検索している面もある。
つまり、相場価格を調べたり、ネットでの評判を調べるわけだ。ある商品や企業を調べた際に、1件も検索結果に出てこなかったら、ユーザーは不安に感じる可能性がある。誰がその商品について語っているか、より第三者的なサイトにポジティブな評価が書かれているかなど、企業はウェブ上での商品やサービスの見せ方をより広い視野で考えなければならなくなっている。
「テレビや雑誌、DM、イベントなど、さまざまなメディアから、ネットへユーザーを誘導するルートを考える必要があります。しかし、単に誘導するだけではなく、どういう人を何の目的で連れて行くのかという、メトリックを明確にすることが何より重要です。せっかくウェブページを訪れても、誰に何を訴求したいのかが定まっていないと、ユーザーに訴えることはできません。自社は何をもってコンバージョン(成果)とするのか。そして、ネットは定量的な分析が可能なのですから、どういうルートでユーザーが訪れているのか分析することも求められます」(山中氏)
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