「研究者として、サーチエンジンに限って言えば、(最新の海外研究に)キャッチアップするのは難しいとの危機感を持っている」──。
国立情報学研究所(NII)は3月6日、ヤフーのQ&Aサービス「Yahoo!知恵袋」の研究利用に関する発表会の席で、NII教授で工学博士の大山敬三氏は、新たな研究展開の根底にある理由について、このように述べた。
NIIとヤフーはこのほど、Yahoo!知恵袋に関する研究利用契約を締結。2007年4月からNIIなどの研究コミュニティへ同データを無償提供する。情報検索や情報分析などの研究者に対し、Q&Aサービスのデータ活用を支援する目的だ。
背景にあるのは、海外と比べて国内の情報学研究が遅れているとの危機感。海外ではGoogleなどの企業が大学や研究機関にデータ提供を行い、「非常に高度な研究論文が書かれている」(大山氏)。その一方で、日本語特有の言語解析における研究や「Q&Aの分野で(海外の最新研究と比べて)日本は健闘している」(大山氏)ことから、競争力が高いと見られる分野において、ヤフーとデータの研究利用契約を結ぶことになった。
今回の提携の発案者はヤフーで検索事業を担当する岡本真氏。社外の研究者同士のコミュニティでQ&A分野の研究が進んでいないことが話題となり、ヤフーの社会貢献事業の一環として、NIIへYahoo!知恵袋のデータを提供することを提案。「データは欲しかったが、企業が無償提供するとは思わなかった」(NII副所長の東倉洋一氏)NIIの考えと一致した。
Yahoo!知恵袋ではサービス提供当初から研究機関へのデータ提供を行う可能性についてサイト上で明言しており、その旨に同意した人がサービスを利用できる仕組みになっている。そのため、データに含まれる個人情報の取り扱いにおける問題はないとしている。
データは関連分野の研究コミュニティやNIIのプロジェクト、15カ国で102研究グループが参加する評価実験用の研究基盤「NTCIR」(エンティサイル)などで活用されると見ている。
NIIは今後、ヤフー以外のサービス提供者にも多様なデータ提供を呼びかける方針だ。
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