顧客の心に火をつけるデータ活用

「API」をマーケティングの前輪に--寺田倉庫に学ぶ“データドリブン”の勘所

 APIデータを基軸にデジタルマーケティングを展開する、異色の倉庫会社・寺田倉庫を訪ねました。minikuraグループ minikuraチームリーダーの柴田可那子氏、サブリーダーの今成真之介氏への取材を再構成して、データドリブンマーケティングの勘所をお伝えします。


寺田倉庫 minikuraグループ minikuraチームリーダーの柴田可那子氏(左)、サブリーダーの今成真之介氏

デジタル時代のメディアに依存しないマーケティング活動

 メディアはマーケティングにおいて効果と効率の母でした。的確なターゲティングに不可欠で、奏功すれば読者を顧客に変えることが可能です。

 ただ、マーケティングにおけるメディアの重要性がかつてよりも高まっているとは言い難いのが現代です。例えば、有料会員を持たない多くのメディアは、広告収入に偏った収益構造のため、IoTなどの新分野をテーマにしたメディアが極めて少ない状況です。よって、先進的な企業ほど新分野へ広告出稿できる機会を逸しています。また生活者に目を転じると、時代とともに価値観が変わり、指向が細分化したことで企業は効率的にアプローチしにくくなりました。言い換えると、社会の変化にメディアが呼応できているかは疑問が残り、企業はメディアをマーケティングに活用しにくい状況とも言えます。

 その一方、テクノロジは新しいヒーローを育てつつあります。実名SNSを強みにした精緻なターゲティングが可能なFacebook広告や、データ解析の速度向上の恩恵を受けたアドネットワークは、取引額を伸長させています。ただ、一部のメディアに集中するため、入札価格が上がることで獲得効率が落ちたり、特定ユーザーに同じメッセージを連呼したりと、持続的な効果については保証できかねます。

 一時期から、「広告に依存しないマーケティング手法」としてPRの有用性が注目されるようになりました。私もその業界に長くいたので、顧客からの期待も強く感じました。しかし、上記のような実状に鑑みると、より上位概念にある「メディアに依存しないマーケティング」が現代に求められているのかもしれません。そして、1つの解としてAPIをご提案します。

APIがデータドリブンマーケティングを加速する理由

 APIの価値を理解せずして、デジタル時代のマーケターとは言えません。API(Application Programming Interface)は、ウェブサービスの特定の機能を他社が簡単に利用するためのレシピとも言え、GoogleやAmazon、Facebookなどがエコシステムを築くために不可欠な存在でした。APIは利用者目線で見ることが多いかもしれませんが、本稿では提供側から話を進めます。(API提供の価値についてはCNET Japanの過去記事でも言及。)

 実例で話を進めるとさらに明解だと思います。Facebookの「いいねボタン」は、今ではメディアでもHPでも当たり前ですが10年前は存在しませんでした。この「いいねボタン」を含めた一連のAPIにより、Facebook社は誰がどのサイトを訪問したのかといった行動履歴情報を大量に入手しました。またAppleは健康管理や住宅・家電関連など4000に及ぶAPIを公開し、iPhoneと連携する商品やサービスを簡単に開発できる環境を用意しています。それにより、ネット上の制空権を手にし、どのAPIが収益を生むのかを理解し、さらには提供企業のユーザー(新規顧客)のインサイトまで知ることができます。

 企業同士のコラボレーションは、今までの場合、悪く言えば達成感だけが残り、それ以外に何も残らないことが多々ありました。ただ、APIを介したデジタルコラボレーションの場合、少なくともデータが残ります。そして、既述の通りそのデータの価値は絶大に大きいのです。APIは独自のエコシステムを築き上げるのに寄与し、マーケティングの効果と効率を高めます。

APIの提供・享受企業のマーケティング上のメリット
APIの提供・享受企業のマーケティング上のメリット

 日本国内においてAPI提供を積極的に進めている企業の1社が寺田倉庫です。同社は物流や保管において高い技術力を有し、2013年には取得が難しいと言われる「ビジネスモデル特許」を取得しました。彼らがなぜAPI公開に至ったのか、それによって実現できたことについてお尋ねしました。

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