「てなんど小林プロジェクト 高校生とてなむCM企画」のストーリー

 企業が生活者とコミュニケーションしていくには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。

 宮崎県小林市の地域PRプロジェクト「てなんど小林プロジェクト」が実施した「高校生とてなむCM企画」には、多くの人々の感情を刺激するストーリーがありました。

 それまで全国的にほとんど知られてなかった小林市を有名にしたのが 「ンダモシタン小林」といいう移住促進PRムービーでした(このコラムでも以前に取り上げました)。

 動画は、長年小林市に住んでいるという設定のフランス人男性が、市の魅力を案内するという内容でしたが、フランス映画を思わせる上質な作りとあっと驚くオチがありました。そのため「必ず二度見たくなる動画」ということで話題になり、190万回を超える再生回数になっています。

 実はこの動画は、小林市の地域PRプロジェクト「てなんど小林」の一環として生まれたものでした。

 「てなんど」とは、小林市を含む西諸地域の言葉(西諸弁)で「一緒に」という意味の「てなむ」と、地域資源のブランド化をしたいという思いの「ブランド」をつなぎ合わせた造語です。西諸弁が非常に聞き取りにくいという短所を長所としてPRするのが主旨で、地元の人たちが出演している西諸弁ポスターなどもサイトで見ることができます。

 そして、「ンダモシタン小林」に続くPRムービー第2弾として製作されたのが「高校生とてなむCM企画」でした。この企画は宮崎県立小林秀峰高校商業科・経営情報科の生徒47人とのワークショップを通して、自由な発想で新しい小林市のCMを作ろうというもの。

 テーマは「市民や市出身者の応援」。とにかく見た人が元気になるなら、何をモチーフにしてもいいという自由なルールのもと、6人1組8グループに分かれCM企画が考えられたのです。

 まずプロのPR動画制作チームが、CMの考え方や制作手順をレクチャー。その上でアイデア出し、モチーフ探し、ストーリー作り、絵コンテ、中間プレゼンというプロセスを経て、8作品をビデオコンテにし最終プレゼンが実施されました。

 その結果、CM化の権利を勝ち取り実際に制作されたのが、小林市市民応援ムービー「山奥」篇というものです。


 小林市のある山奥で道に迷ってしまった青年が倒れ込むと、そこに現れたのが山の神様!よかったと青年が道を訪ねるのですが、神様が話す言葉は西諸弁…という内容です。

 CMとしてもおもしろいですが、何よりも地元高校生たちが考えた企画ということにストーリーがあります。話題性もあるので、色々なニュースで取り上げられました。また地元住民の参加意識も芽生える企画になっているので、次に繋がるストーリーがあることも大事な要素です。

 このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。あなたの会社のコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?

◇ライタープロフィール
川上徹也(かわかみ てつや)
広告代理店勤務を経て、コピーライターとして独立。 最近は広告制作に留まらず、「ストーリーブランディング」の第一人者として、 様々な企業のコミュニケーション戦略をサポートしている。 6/10新刊『こだわりバカ』(角川新書)発売! 。

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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