「ビッグデータを分析して自社の事業に生かせないものか」――そう考えて試行錯誤するものの、思うように成果を上げることができずに悩んでいる企業担当者は少なくない。業種や企業によってビッグデータの定義が異なるため、「これをやっておけば大丈夫」というモデルケースがなかなか存在しないことも、その要因の1つと言えるだろう。
この一方で、ビッグデータを自社の成長にうまくつなげている企業もある。検索ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフーも、10年以上前からビッグデータを活用して事業を拡大させている企業だ。月間PVが507億(2013年1~3月平均)、秒間アクセス数が約5万におよぶ巨大ポータルサイトを運営する同社は、ビッグデータをどのように定義し、事業に生かしているのか。ヤフー データソリューション本部 本部長の小間基裕氏に聞いた。
ヤフーにとってのビッグデータとは、主に検索キーワードやクリックといったサイト上でのユーザーの行動履歴だ。同社では、これらの膨大なデータをサービスの随所に活用しているという。たとえば、Yahoo!ショッピングにはユーザーの購入履歴などに基づいたレコメンデーション(推薦)機能を導入しており、導入前と比較して平均のクリック率は2倍、クリック先で商品が購入される回数も5倍に増えているという。
また、検索時のサジェスト(入力補助)機能で一覧表示されるキーワードの候補は、単純に検索数が多い順に並べられていると思われがちだが、実際にはユーザーごとに、どのワードがどれくらいクリックされているかを分析して、順番を入れ替えるなどの細かいチューニングを施しているという。
さらにサイト上では日ごろからA/Bテストを実施し、得られたデータをサービスや機能に反映している。たとえば、全体のうち5%のユーザーだけ検索窓の縦幅を22ピクセルから28ピクセルに広げる。一見するとほとんど違いが見られないが、これだけ小さな変化でも検索連動型広告の売上げが0.64%(この当時で4億8000万円)上がるなど、大きな影響があるのだという。
こうした細かな改善の積み重ねによって、ヤフーならではの優位性を生み出していると小間氏は語る。「検索ではGoogleを使っている人もいるし、ECだと楽天やAmazonを使っている人もいる。けれど、データトラフィックやユーザーリーチなど、データ面では我々が圧倒的にナンバーワンだと思っている。この強みを徹底的に生かすことで、ユーザーファーストを実現してきた」(小間氏)。
現在は、Yahoo! JAPANのトップページや検索、EC、広告など、ヤフーの事業の中核を担う領域においてデータが利活用されており、今後はあらゆるサービスに適用していきたい考えだ。
では、日々蓄積される膨大な量のデータをどのように処理しているのか。その疑問について小間氏は「すべてのデータ項目を処理対象にしない。逆に一度決めた項目は徹底的に処理対象にする」と説明する。
Yahoo! JAPANに1人のユーザーがアクセスするだけで膨大なデータ処理が発生するため、すべてを処理対象にしていては、いくつサーバを用意しても間に合わない。しかし、たとえば検索キーワードのサジェストを作るだけであれば、タイムスタンプと検索キーワードだけを抽出して小規模なデータベースにすれば済む。つまり、ビジネス要件にあったデータのみをピックアップすることが重要なのだという。
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