「Retty」が実践した“年200件のUI改善”に学ぶ--考えるよりも仮説を即実装 - (page 2)

仮説はまず実装してみる--挑戦しなければ、結果は得られない

--2015年は年間200件を超えるUIの改善をしたそうですが、具体的にはどのような施策を行ってきたのでしょうか。

 これまで実践してきたUI改善のプロジェクトでは、質の高いクチコミ投稿や写真、お店探しの参考になるような有益なデータを集める点をゴールに考えてきました。そこでまず手掛けたのが、たとえば導線のデザインを見直すなどして投稿に対する心理的なハードルを下げるという施策です。

 チームで仮説を立てて実装してみたところ、これは効果を生み出すことに成功しました。具体的には、店舗一覧から投稿を促す際にテキストボックスを設置していた場所を評価ボタンに変更したところ、投稿件数が大幅に増加しました。

テキストボックスだった旧デザイン(左)をボタン選択(右)にしたことで投稿数が大幅に増加したという
テキストボックスだった旧デザイン(左)をボタン選択(右)にしたことで投稿数が大幅に増加したという

 その次に、投稿機会を作り出すためにユーザー導線の設置などタッチポイントを増やし、投稿数の増加を狙いました。加えて、Rettyのスマートフォンアプリを使うユーザーへの動機付けとして、投稿のためのチュートリアルの強化といった施策も実施しています。一方で、たくさん投稿してくれるユーザーのモチベーションをどのように維持していくかという観点でも施策を考え、参考になった投稿に対して閲覧者が投稿者に「参考になった」という気持ちが伝えられる機能を実装しました。

 ユーザーに何をしてほしいのか、そしてそれがいかに簡単にできて、結果的に価値のあるものになるのか、という点を理解してもらうためのUIの改善やチュートリアルの強化をしてきたと言えると思います。

--クチコミを投稿するUIも、改善することで大きく効果を生み出す結果になったと聞いています。

 投稿UIを改善するプロジェクトでは、改善前後で初めてクチコミを投稿する人の数が約220%増加するなど大きな効果を生み出すことができました。具体的には、これまではスマートフォン画面のファーストビューに投稿に必要な要素を全て収めていたのですが、これではユーザーに圧迫感を与えてしまい投稿することそのものがプレッシャーになってしまっていました。これを改善後には、1ページあたり1つのアクションにして、タップしてページをめくりながら投稿ができるようなシンプルな作りにしています。これで、ユーザーが感じる投稿へのハードルが下がったのです。

旧投稿UI(左端)は、ページ内に投稿に必要な要素が全て収まっている。これを右2点のようにタップしながらテンポよく投稿が進められるようなフローに変更した
旧投稿UI(左端)は、ページ内に投稿に必要な要素が全て収まっている。これを右2点のようにタップしながらテンポよく投稿が進められるようなフローに変更した

--PCのUIではページ遷移が多いと離脱のリスクが高まると言われています。スマートフォンのUIではこれと逆のアプローチなのですね。確かに、スマートフォンの場合にはタップしてページがどんどん進んでいったほうが、テンポがよいと感じます。

 このUIは、ユーザーの温度感や利用シーンの流れを意識して設計しました。もちろん、ページ遷移が増えることによる離脱のリスクは考慮していました。しかし、まずはリスクを承知した上でダイナミックに施策の方向性を振り切ることで、ユーザーの動向を見ながらこまめな軌道修正を検討すればよいのではないかと。勇気が必要なことですが、やりきらなければ結果も見えてきません。考えるよりも、まずは仮説を行動に移してみることが重要だというのが、デザインチームの基本的な方針です。

--RettyのようなUGC(ユーザー作成コンテンツ)の場合、情報コンテンツを中心としてウェブのUIと比べて工夫しているポイントなどはあるのでしょうか。

 UGCの場合、一番重要なのはコミュニケーションではないかと思うのです。Rettyの場合は、ユーザーの投稿がコンテンツとなり、それがユーザーの良い体験を生み出すという流れの中で、どこか一カ所が途切れてしまうと、サービスは思い通りに回りません。この流れを止めないようにコミュニケーションを生み出していくことが重要であり、UIはこのユーザーストーリーに沿った形で考えられていかなければならないのです。

--UGCのUIを考えようとしたときに、運営サイドの都合で考えてしまうと「少し面倒だけれどユーザーは何とかしてくれるはずだ」という甘えを持ってしまいがち。そうすると、ユーザーのフローが途切れやすくなり、離脱も増えてしまいますよね。

 目的にもよると思いますが、Rettyのような投稿UIの場合には、「まずは間口を広げてみたらどういう結果になるのか」を検証しながらUI全体の最適化をはかっていくことが重要だと言えそうです。明確な答えがあるものではないので、試行錯誤を繰り返すことが大切ですね。

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