全国に19店舗を構えるショッピングセンターのPARCOは、1月にオンラインショッピングモール「PARCO CITY」を閉じ、実店舗とオンラインを連携させる独自の施策を始めて成果を上げている。
店舗(テナント)とその顧客が24時間コミュニケーションをとれる仕組みや、SNSを主な動線とした店頭在庫を使ったECなどで購買の機会を増やしたほか、顧客向けスマートフォンアプリを使って有用なデータを日々ため込み、次に打つべき一手を検討している。
方向を転換した裏には何があったのか。パルコのWEB/マーケティング部部長である林直孝氏に聞いた。パルコおよび林氏は、2015年の「CNET Japan CMO Award」を受賞し、11月10日に開催される「CNET Japan Conference 2015--カスタマーエクスペリエンスセミナー」に他の受賞者である伊藤園、日本航空とともにパネルディスカッションする。
--オンラインモールをやめて、消費者との新たな関わり方を構築しました。どのような経緯があったのでしょうか。
林氏:2007年にPARCO CITYを立ち上げて、2015年1月にクローズしました。開始当時、オンラインショッピングモールのファッション領域では、「ZOZOTOWN」や「Stylife」、「MAGASEEK」などが先行していました。
当初は売り上げが倍々ゲームで増えていましたが、2010年頃に潮目が変わりました。その一因は、ZOZOTOWNが急成長していたこと。PARCOのさまざまなテナントがZOZOTOWNに出店、勉強をして、自社のECサイトの仕組みを充実させてきた時期に合致するので、何かしら因果関係があると見ています。
そこから、PARCO CITYの「モール」という仕組みの必要性が薄れてきました。その後2015年まで継続しましたが、その間に、ZOZOTOWNの売り上げがますます伸びて、かつテナントの自社ECサイトへの力の入れ具合も強まりました。
その一方で、2012年、ウェブのプロジェクトを進めるチームが社内に立ち上がりました。それはECの施策を練るというよりも、「顧客とのコミュニケーションの仕方が変わってきた」との経営サイドからの問題提起を受けて、顧客との新たなコミュニケーションを形にすることをミッションとしたチームです。
顧客とのコミュニケーションに関して、パルコは昔から、テレビを中心としたマスメディアを通じて「パルコはおしゃれ」「パルコは面白いことをしている」といったことをお客さまに感じていただき、実際に来店していただいて、テナントの皆さまによりよい商売をしていただく、という流れが成功体験としてありました。
しかし、“マスメディアからその先に伝わることの上限のようなもの”が昔とは異なってきており、課題として挙げられるようになりました。そしてその課題には、スマートフォンとSNSが深く関わっている、と考えていたのです。当時、PARCOのウェブサイト来訪者のおよそ7割がスマートフォンからのアクセスでしたが、そのスマートフォン用サイトは、まだガラケー(フィーチャーフォン)のサイトをもとにしたものでした。それをスマートフォンに最適化しようと方針を固めました。
当時はPARCOの全19店舗の中で、TwitterやFacebookを運営しているところとしていないところがあり、テナント側ではPARCOのウェブサイトでショップブログをやっている店とやっていない店とがありました。それを必須にしようと決め、全店にブログを使ってもらうプラットフォームを作ることを提案しました。
実行に移したのは2013年春。今のWEB/マーケティング部の前身であるWEBコミュニケーション部で、私を含む6人でスタートしました。WEBコミュニケーション部ができた時点では、PARCO CITYは子会社のパルコシティが運営していましたが、店舗のウェブサイトとECモールを同じ部門でオペレーションすべく、パルコに移管しました。
2013年春から秋にかけて、19店舗のウェブサイトをリニューアルしました。そしてその頃から、オムニチャネルという言葉が目立ってきました。我々には、店頭にいらっしゃっていただく消費者と、そこで商売をするテナントの方々という2通りのお客さまがいます。我々のようなショッピングセンターの「オムニ」とは何かと考えた時に、従来の「店舗」というプラットフォームとウェブのプラットフォームの両方をテナントにサービスとして提供するのが、我々らしさがあって強みを生かせると考え、テナントのスタッフの「接客」をオムニチャネル化するのが我々がやるべきことではないか、と定義しました。
来店前から来店中、来店後に至るまで、24時間、テナントと消費者がウェブでつながっている状態を作り、特にスマートフォンを意識して、「接客は来店前から始まっている」というコンセプトで、お客さまとコミュニケーションをするスタイルに変えたのです。そのコミュニケーションの中には「商品の購買」の機会もあります。我々はそれを「24時間パルコ」と呼ぶことにしました。CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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